犬猫はたんぱく質を“貯金”できる?|食べたたんぱく質と筋肉の関係
脂肪は、使い切れなかったエネルギーを体に“貯金”しておくことができます。では、たんぱく質はどうでしょう。「たくさん食べておけば、必要になった時のために筋肉として取っておける」と思うかもしれません。
実は、体には脂肪のようなたんぱく質専用の大きな貯蔵庫はありません。食べたたんぱく質は、毎日使われ、作り替えられ、余れば別の代謝へ回されます。
この記事では、食べたたんぱく質が体でどのように使われるのか、筋肉との関係、犬と猫で異なる考え方、シニア期に見ておきたいことを解説していきます。
たんぱく質は、体をつくり続ける材料です
食事から摂ったたんぱく質は、消化されてアミノ酸になります。アミノ酸は、筋肉だけでなく、さまざまな場所で必要になる材料です。
– 筋肉
– 皮膚や被毛
– 酵素やホルモン
– 抗体など免疫に関わるもの
– 血液中のたんぱく質
体のたんぱく質は、一度作られたら終わりではありません。古くなったものが分解され、新しいものが作られる「合成と分解」を繰り返しています。
そのため、たんぱく質の役割は、筋肉を大きくすることだけではありません。体を日々維持し、傷んだ部分を作り替えるための材料を届けることが大切な役割です。
アミノ酸を大量にしまっておく場所はありません
血液や細胞の中には、遊離アミノ酸(ゆうりアミノさん)と呼ばれる、たんぱく質になる前のアミノ酸が存在します。これをアミノ酸プールと呼ぶことがあります。
食事から吸収されたアミノ酸や、体内のたんぱく質が分解されて生じたアミノ酸は、このプールへ入り、必要に応じて新しいたんぱく質の材料になります。
ただし、アミノ酸プールは大きな倉庫ではありません。脂肪のように「今日は多めに食べたから、来週の分までそのまま保管しておこう」ということはできないのです。
食べる
↓
アミノ酸になる
↓
必要な場所で使われる
↓
余った分は別の代謝へ回る
という流れで、アミノ酸は常に入れ替わっています。
余ったたんぱく質は、すべて筋肉になるわけではありません
必要量を超えたアミノ酸が、そのままたんぱく質として保存されるわけではありません。
アミノ酸には窒素を含む部分と、炭素骨格(たんそこっかく)と呼ばれる部分があります。余ったアミノ酸は分解され、窒素を含む部分は主に尿素として体の外へ出されます。残った部分は、エネルギーとして使われたり、ブドウ糖をつくる材料など別の代謝経路で利用されたりします。
つまり、たんぱく質を余分に食べても、そのすべてが筋肉になるわけではありません。
たんぱく質は大切な栄養素ですが、「余った分まで筋肉として貯金できる」という仕組みではないことを知っておきましょう。
筋肉は“倉庫”ではないけれど、大切なたんぱく質資産です
筋肉は、本来、立つ・歩く・走る・姿勢を保つといった動きのための組織です。余ったアミノ酸をしまうためだけの場所ではありません。
一方で、食事量が減った時や病気・強いストレスで体が多くのアミノ酸を必要とする時には、筋肉のたんぱく質が分解され、ほかの組織で使われるアミノ酸を供給することがあります。
このため筋肉は、体にとって大きな“たんぱく質資産”ともいえます。ただし、筋肉が分解されている状態は、体がその資産を取り崩している状態です。筋肉を守るためには、一度に多く食べさせることより、毎日必要な栄養とエネルギーを届けることが大切です。
筋肉を守るには、「材料」と「使うこと」の両方
筋肉もたんぱく質から作られるため、食事から十分なアミノ酸を得ることは欠かせません。
ただし、材料があるだけで筋肉が自動的に増えるわけではありません。筋肉量は、次のようなことのバランスで変わります。
– たんぱく質とアミノ酸の摂取
– 十分なエネルギー摂取
– 年齢と活動量
– 運動による適度な刺激
– 病気や痛みの有無
– 筋たんぱく質の合成と分解のバランス
運動がほとんどないのに、必要以上の肉や高たんぱくなトッピングを加えても、そのすべてが太ももや背中の筋肉になるわけではありません。
反対に、よく動いていても、食事量やエネルギーが足りなければ、筋肉を維持しにくくなります。筋肉を守るには、材料と、体を無理なく使うことの両方が必要です。
たんぱく質は、“量”だけでは選べません
フードの表示にある粗たんぱく質の割合は、選ぶ時の一つの目安です。しかし、数字が高ければ必ずよい、低ければ必ず悪いとは言えません。
たんぱく質は、含まれる必須アミノ酸の種類と量、消化・吸収されやすさなどによって、体での使われ方が変わります。
たとえば、粗たんぱく質30%のフードが25%のフードより、すべての犬猫にとって優れているとは限りません。その子の年齢、体格、活動量、体調、主食全体の設計を合わせて見ることが大切です。
猫は、犬よりたんぱく質への要求が高い

猫は肉食動物として進化してきたため、犬とはアミノ酸の代謝や必要量が異なります。成猫に必要とされるたんぱく質量の基準は、犬より高く設定されています。
猫は、たんぱく質を多めに含む食事へ対応する代謝の特徴を持っています。しかし、だからといって、余ったたんぱく質をすべて筋肉としてため込めるわけではありません。余ったアミノ酸は犬と同じように代謝されます。
また、「猫は肉食だから、どれだけ高たんぱくでもよい」と単純に考えることもできません。総合栄養食を土台に、体重、筋肉、便、食欲、持病を見ながら、その子に合う食事を選びましょう。
シニア期は、体重だけで筋肉を見ない
犬猫は年齢とともに、除脂肪体重(じょしぼうたいじゅう:脂肪を除いた体の重さ)や筋肉量が減っていくことがあります。
たとえば、筋肉が減る一方で脂肪が増えると、体重はほとんど変わらないことがあります。そのため、「体重が同じだから大丈夫」とは限りません。
シニアの子では、体重に加えて、次のようなことにも目を向けてみましょう。
– 背中や太もも、肩まわり、頭部の筋肉が痩せていないか
– 立ち上がるまでに時間がかかっていないか
– 散歩の歩幅や速度が変わっていないか
– 猫なら、以前より高い場所へ上がらなくなっていないか
筋肉の役割や、日常で見られる変化については、以前のコラム「犬・猫の筋肉が健康を支える理由」でも詳しく紹介しています。
シニアだから、たんぱく質を一律に減らすわけではありません
年齢を重ねて活動量が落ちたからといって、健康なシニア犬猫のたんぱく質を一律に減らす必要はありません。むしろ、筋肉を保つために、十分なエネルギーと質のよいたんぱく質を確保することが大切な場合があります。
ただし、腎疾患、肝疾患、尿路の病気などがある子では、栄養管理を個別に考える必要があります。「シニアだから高たんぱく」「筋肉のために肉を追加」と自己判断で食事を変えず、療法食を食べている子や持病のある子は獣医師へ相談しましょう。
昨日たくさん動いたから、今日だけ肉を足す必要はある?
昨日長く歩いた、たくさん遊んだという時に、「筋肉のために今日は肉を大量に足さなければ」と心配する必要はありません。
総合栄養食を適正量食べられていれば、基本的に必要なたんぱく質とアミノ酸は、毎日の食事から供給されます。
大切なのは、特別な一日だけで帳尻を合わせることではありません。日頃から十分な栄養をとり、適正な体重を保ち、その子に合う運動と休養を続けることです。トッピングを楽しむ時も、主食のバランスを崩さない量にとどめましょう。
まとめ|たんぱく質は、一度に貯めるより毎日届ける
犬猫の体には、脂肪のようなたんぱく質専用の貯蔵庫はありません。食べたたんぱく質はアミノ酸になり、筋肉、皮膚、被毛、酵素などを日々作り替えるために使われます。
余ったアミノ酸は、そのまま筋肉として保存されるのではなく、分解されてエネルギーなど別の用途へ回されます。だから、たんぱく質を多く食べるだけで筋肉が増えるわけではありません。
大切なのは、一度にたくさん“貯金”することではなく、その子に必要な栄養を毎日きちんと届け、無理のない範囲で筋肉を使うことです。特に年齢を重ねた子ほど、「体重が変わっていないから大丈夫」だけではなく、今ある筋肉を守れているかまで見てあげたいですね。
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