犬猫は甘い味が分かる?|実は犬と猫で違う“味覚”の話
甘いさつまいもをうれしそうに食べる犬。アイスクリームやヨーグルトに興味津々な猫。「犬猫も、私たちと同じように甘いって分かっているのかな?」と思ったことはありませんか。
じつは、“甘い”の感じ方は犬と猫で大きく違います。犬は自然な糖の甘味を感じられますが、猫は糖の甘味を犬や人のようには感じません。
この記事では、犬と猫で異なる味覚の仕組み、猫が甘い食べ物に興味を示す理由、甘味と人用のお菓子を分けて考えたい理由を紹介します。
犬と猫では、「甘い」の感じ方が違う
犬は、ショ糖、ブドウ糖、果糖など、自然な糖に反応し、甘味を感じられることが行動試験や神経生理学的な研究で示されています。
一方、猫では糖に対する同じような反応はほとんど見られません。犬と猫が同じ食べ物を口にしても、同じ“甘さ”を感じているとは限らないのです。
もちろん、犬も人とまったく同じように甘味を感じているわけではありません。人には甘く感じる甘味料でも、犬が同じように好むとは限らず、犬には犬の味覚の世界があります。
猫が糖の甘味を感じにくいのは、受容体の違い
犬や人を含む多くの哺乳類には、舌で糖の甘さを受け取るための「甘味センサー」があります。このセンサーは、T1R2(ティーワンアールツー)とT1R3(ティーワンアールスリー)という二つの部品がそろって働きます。
ところが猫では、T1R2を作るための設計図にあたるTas1r2(タスワンアールツー)という遺伝子が、途中で働かなくなっています。二つの部品がそろわないため、猫は犬や人のように、糖の甘さを受け取るセンサーを作れません。
つまり猫は、甘いものへ興味がないというより、糖の甘さを感じ取るための仕組みそのものが、犬や人とは違うのです。
トラやチーターも、甘味を感じにくい
猫だけではなく、トラ、チーター、ライオンなど、ほかのネコ科動物でもTas1r2が機能しないことが確認されています。
肉を中心に食べる進化の中で、糖の甘味を検出する能力を保つ必要が小さくなった可能性が考えられています。これは進化の一つの仮説ですが、完全肉食に近い動物で甘味受容体が失われている比較研究とも合う考え方です。
毎日を私たちと暮らす猫にも、野生のネコ科動物とつながる味覚の特徴が残っているのは、少し不思議でおもしろいことですね。
猫がアイスを舐めるのは、甘いから?
猫がアイスクリーム、生クリーム、ヨーグルト、ケーキなどに興味を示すことがあります。でも、それだけで「猫も甘味を感じている」とは言えません。
猫は、食べ物を甘味だけで選んでいるわけではありません。乳製品の脂肪や香り、なめらかな食感、ひんやりした温度、飼い主さんが食べていることへの興味など、別の要素に引かれている可能性があります。
人用の甘い食べ物は、猫にとって必要な食品ではありません。乳製品でお腹が緩くなる子もいますし、砂糖や脂肪が多いもの、チョコレートなどが入ったものは与えないようにしましょう。
猫は“味オンチ”ではなく、肉の味をよく感じている
甘味を感じにくいからといって、猫の味覚が弱いわけではありません。
猫には、うま味に関わる受容体があります。研究では、肉や魚に多いヌクレオチドと、特定のアミノ酸の組み合わせに猫が反応しやすいことが示されています。
たとえばツナが猫に好まれやすい理由の一部には、イノシン酸のようなヌクレオチドとアミノ酸の組み合わせが関係する可能性があります。
猫は、糖の甘味を感じない代わりに、肉を食べる暮らしに合った味や香りを受け取るよう進化してきたと考えられています。
犬が甘いものを好きなら、お菓子を分けてもいい?

犬が甘味を感じられることと、人用のお菓子を与えてよいことは、まったく別です。
犬が甘いさつまいもや果物に関心を示すことはありますが、砂糖、脂肪、食塩が多い人用のお菓子を、犬のために与える必要はありません。犬に甘いものをあげる時も、食べられる食材か、量は少ないか、ほかの原材料が入っていないかを確認しましょう。
特に気を付けたいのが、キシリトールです。
「シュガーレス」でも、犬には危険なことがある
キシリトールは、犬が食べると急激なインスリン分泌を起こし、重い低血糖につながることがあります。量によっては肝障害を起こすおそれもあります。
キシリトールは、シュガーレスガムやキャンディだけでなく、焼き菓子、一部のナッツバター、歯みがき粉、液体薬、サプリメントなどに使われることがあります。
「砂糖不使用」「シュガーレス」は、犬にとって安全という意味ではありません。人用の商品を犬に与える前には、必ず原材料表示を見ましょう。
キシリトールを含むものを犬が口にした可能性がある時は、症状がなくても動物病院へすぐ連絡してください。家庭で無理に吐かせようとしないことも大切です。
猫にキシリトール入り食品を与えていい?
犬で見られる急な低血糖や肝障害は、猫では同じように確認されていません。それでも、だからといって猫へキシリトール入り食品を与える理由にはなりません。
人用の甘い食品には、砂糖、脂肪、乳製品、チョコレートなど、猫の食事に向かない成分が一緒に含まれることがあります。犬と猫では毒性や体への影響が同じとは限らないため、「犬に危険ではないなら猫にもよい」「猫で問題が少ないなら犬にもよい」と考えないようにしましょう。
味覚だけで、食べるかどうかは決まらない
犬猫が食べるかどうかは、味覚だけで決まりません。香り、温度、食感、水分量、硬さ、過去の経験、その日の体調などが重なります。
猫が甘い食品へ興味を示すことも、犬が好きだった食べ物を急に食べなくなることも、甘味だけで説明できるとは限りません。
前回のコラムでも紹介したように、食事を少し温めて香りを立たせることで、食べ始めるきっかけになる犬猫もいます。犬猫の「おいしい」は、私たちが思う以上に、さまざまな感覚から作られています。
まとめ|犬と猫には、それぞれのおいしさがある
犬は甘味を感じられますが、猫は糖の甘味をほとんど感じません。猫が甘い食べ物に興味を示しても、甘味ではなく、脂肪、香り、食感、温度などに引かれていることがあります。
甘味を感じにくい猫も、肉や魚に含まれるうま味に関わる刺激を受け取っています。猫は味が分からないのではなく、猫らしい食事に合った味覚を持っているのです。
私たちには同じ「おいしそうなもの」に見えても、犬と猫が感じている味の世界は同じではありません。その子が何をおいしいと感じるのかを知ることは、犬猫のからだがどんな食べ物に適応してきたのかを知ることでもあります。毎日何気なく見ている「食べる」という行動にも、犬と猫それぞれの進化が隠れているのです。
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