犬はみんな犬同士で遊びたい?|“友達を選ぶ”犬たちの社会性
散歩中、ほかの犬を見つけると、しっぽを振って近付く子。少し挨拶をしたら満足して、そのまま飼い主さんと歩きたい子。犬同士で遊ぶことが大好きな愛犬もいれば、犬より人と過ごす時間を好む愛犬もいます。
犬は社会的な動物ですが、だからといって、すべての犬と遊びたいわけではありません。人にも、大勢で集まるのが好きな人と、気の合う数人と過ごす方が落ち着く人がいるように、犬にも心地よい距離や相性があります。
この記事では、犬の“友達付き合い”のさまざまな形と、その子らしい社会性を大切にするための見守り方を紹介します。
犬の社交性は、0か100ではない
「犬好きな犬」か「犬が苦手な犬」かの二つに分けられるものではありません。犬との関わり方には、たくさんの個性があります。
– どんな犬とも遊びたがる
– 同じくらいのテンションの犬だけが好き
– 知っている犬とは遊ぶが、初対面では距離を取りたい
– 一緒に歩くのは好きでも、追いかけっこはしたくない
– ほかの犬を見るのは好きでも、近付かれるのは苦手
– 犬より飼い主さんと遊ぶ方が好き
ほかの犬とたくさん遊ばなくても、散歩中に穏やかにすれ違えたり、必要な距離を取れたりするなら、それも素敵な社会性です。
犬にも、気の合う“友達”がいる
犬同士の相性には、体格だけでなく、遊び方、テンション、年齢、経験、性格などが関わります。
追いかけっこが大好きな犬と、ゆっくりにおいを嗅ぎながら並んで歩くのが好きな犬。どちらも他犬が嫌いなわけではなくても、同じ遊びを楽しめるとは限りません。
大切なのは、「犬同士だから仲良くなれるはず」と期待しすぎないことです。安心して一緒に歩ける、同じ空間でそれぞれに過ごせる、時々だけ遊ぶ。そんな関係も、犬にとって大切な友達の形です。
大人になると、付き合い方が変わることもある
子犬の頃は、犬を見ると誰にでも駆け寄りたがった子が、成犬になると「仲のよい犬だけでいい」となることがあります。
成長とともに遊び方の好みが変わったり、激しい遊びより落ち着いた散歩を好むようになったりすることは、珍しいことではありません。シニア期には、一緒に歩いたり、そばでにおいを嗅いだりするだけで満足する子もいます。
昔の愛犬と比べて「前はドッグランが好きだったのに」と心配しすぎず、今のその子が何を心地よいと感じているかを見てあげましょう。
ドッグランが苦手でも、社会性がないわけではない

ドッグランは、知らない犬が次々に近付き、興奮した犬もいて、逃げる場所が限られることがある特別な環境です。家では仲のよい犬と楽しそうに過ごせても、ドッグランでは緊張する犬がいても不思議ではありません。
飼い主さんの足元へ隠れる、ほかの犬を避ける、端でずっとにおいを嗅ぐ、帰りたがるといった様子が続くなら、その子にはドッグランが合わないのかもしれません。
無理に「遊んできな」と犬の群れへ入れる必要はありません。ドッグランに行かないことは、犬との暮らしの楽しさを減らすことではなく、その子に合う楽しみ方を選ぶことです。
社会化は、“たくさんの犬と遊ばせること”ではない
社会化とは、さまざまな人、犬、場所、音、物に対して、犬が落ち着いて適切に対応できるようになることです。
怖がっている犬を、慣れさせようと犬の多い場所へ何度も連れて行くことは、かえって「犬を見ると怖い」と感じる経験を重ねてしまうことがあります。社会化は我慢させることではありません。
散歩中にほかの犬を見ても、吠えず、引っ張らず、少し見たあとにまた歩き始められる。挨拶をしなくても、相手との距離を保って穏やかに過ごせる。他犬を無視できることも、立派な社会性です。
私たちも、道ですれ違う人全員と友達になるわけではありません。犬も、犬を見たら必ず挨拶しなければならないわけではないのです。
「近付きたくない」は、犬の大切な気持ち
ほかの犬と会った時、次のような様子があれば、距離を取りたい気持ちの表れかもしれません。
– 顔や体をそらす
– 飼い主さんの後ろへ入る
– 相手から離れようとする
– 耳を後ろへ倒す、しっぽを下げる
– 口を閉じて体が固くなる
– あくびや舌なめずりが出る
地面のにおいを嗅ぐことは、犬にとって自然な行動です。ただし、ほかの犬を見た直後に、顔をそらす、体を離すといった様子と一緒に見られるなら、気持ちを落ち着けようとしている可能性もあります。
吠えたりうなったりする前の小さなサインに気付き、少し距離を取ることで、犬は「守ってもらえた」と感じやすくなります。
ほかの犬へ強く反応する子もいる
なかには、犬を見ると吠える、リードを強く引いて向かおうとする、うなるといった反応をする子もいます。飼い主さんからは「どんな犬にもけんかを売っているように見える」と感じることがあるかもしれません。
ただし、その背景は一つではありません。怖いから先に追い払おうとしている、興奮が高まりすぎている、過去に苦手な経験があった、リードで離れられないことが負担になっているなど、さまざまな理由が考えられます。
このような反応がある子を、慣れさせようとして犬の多い場所やドッグランへ連れて行く必要はありません。相手の犬と距離を取り、落ち着いて見られる距離から、安心できる経験を少しずつ重ねましょう。急に反応が強くなった時、散歩が難しいほど続く時、けがにつながりそうな時は、痛みや体調の変化も含めて獣医師や行動の専門家へ相談してください。
散歩で会う犬にも、ひと声かける配慮を
散歩中に犬と出会った時、「犬同士だから挨拶させよう」とすぐ近付ける必要はありません。相手の犬にも、近付きたい日と静かに通り過ぎたい日があります。
挨拶をさせたい時は、まず相手の飼い主さんへ「ご挨拶しても大丈夫ですか」と声をかけましょう。飼い主さんがよいと言っても、犬自身が顔をそらす、離れようとする、体を固くするようなら、無理に近付けず通り過ぎます。
反対に、自分の犬が他犬を苦手としている時も、「今日は距離を取ります」「近付かない方が落ち着けます」と伝えて大丈夫です。犬同士に挨拶をさせないことは失礼ではありません。お互いの犬が安心して散歩を続けられるよう、犬の気持ちを一番に考えましょう。
よい遊びは、両方が“続けたい”と思っている
犬同士の遊びには、追いかけっこ、レスリング、甘噛み、おもちゃ遊びなど、いろいろな形があります。少し唸る、口を大きく開ける、体をぶつけるといった動きだけで、すぐにけんかとは判断できません。
遊びを見守る時は、次のような様子を見てみましょう。
– 体の動きがやわらかい
– 追う側と追われる側が時々入れ替わる
– 途中で自然に離れたり、休んだりできる
– 片方だけが追い詰められたり、押さえつけられ続けたりしていない
– 少し離れたあと、犬自身がまた遊びへ戻る
遊びが激しくなってきたら、自分の犬を明るく呼び戻し、水を飲んだり飼い主さんのそばで休んだりする時間を作りましょう。すぐ相手の犬へ戻りたがるのか、そのまま離れていたいのかを見ることも、愛犬の気持ちを知る手がかりになります。
知らない犬同士を興奮したまま手で引き離すと、思わぬけがにつながることがあります。危険を感じる時は、周りの飼い主さんや施設のスタッフへ声をかけ、安全を優先してください。
犬の友達は、多いほど幸せとは限らない
犬友達が10頭、20頭いることが、幸せの基準ではありません。本当に安心して一緒にいられる一頭がいることが、その子にとって大きな喜びになる場合もあります。
また、犬の友達がいなくても、それだけで不幸とはいえません。飼い主さんとの散歩、におい嗅ぎ、おもちゃ遊び、ノーズワーク、ロングリードでの探索などで、毎日を満たしている犬もたくさんいます。
家庭犬は、同居する犬との関係も、飼い主さんとの関係も、それぞれに大切に育てます。犬より人との時間を好む子がいても、それはその子らしい愛情の形です。
多頭飼いでも、距離感はそれぞれ
同じ家に暮らす犬同士でも、関係はさまざまです。いつも寄り添って眠る子もいれば、遊ぶけれど眠る場所は別の子、お互いにあまり干渉せず穏やかに過ごす子もいます。
一緒に寝ないから仲が悪い、遊ばないから寂しい、と決めつける必要はありません。争わず、安心して同じ空間にいられること自体が、よい関係である場合もあります。
ごはん、寝床、おもちゃ、飼い主さんとの時間をめぐって緊張が見られる時は、それぞれが落ち着いて過ごせる場所や時間を分けてあげましょう。
まとめ|友達を作るより、選べることを大切に
犬は社会的な動物ですが、すべての犬と遊びたいわけではありません。犬にも相性があり、好きな遊び方があり、心地よい距離があります。
犬同士でたくさん遊ぶことだけが、豊かな犬生ではありません。気の合う犬と過ごすこと、飼い主さんと歩くこと、一人でゆっくりにおいを嗅ぐこと。その子がどんな時間に安心し、楽しそうにしているかを見つけてあげましょう。
飼い主さんができるのは、愛犬に理想の友達関係を作ることではなく、近付きたい時には近付けて、離れたい時には離れられるようにすることです。その子自身が選べる毎日が、愛犬らしい笑顔と穏やかな時間につながっていきます。
この記事が参考になったら、「いいね」で教えてください
