犬猫は温かいごはんの方がおいしく感じる?|“温度”で変わる食欲の話
いつもと同じウェットフードなのに、冷蔵庫から出したものは食べない。少し温めたら、急に食べ始めた。そんな経験はありませんか。
犬猫にとって、ごはんの「おいしさ」は舌で感じる味だけで決まるものではありません。香り、食感、水分量、硬さ、温度、過去に食べた経験など、さまざまなことが食べたい気持ちに関わっています。
この記事では、食事の温度が香りや食欲へ与える影響、温める時の注意点、食べない時に見逃したくないサインを紹介します。
「おいしい」は、舌だけで決まらない
食べ物を前にした犬猫は、まず香りを嗅ぎます。とくに犬は、食べ始める前に得る嗅覚の情報を大切にしています。
犬猫が食べ物を受け入れるかどうかには、味だけでなく、香り、食感、水分量、硬さ、温度などが関係します。
「味がおいしい」だけではなく、「食べる前によい香りがする」ことも、食欲の大切な一部です。
温めると、香りの届き方が変わる
食べ物には、空気中へ飛び出して鼻に届く揮発性成分(きはつせいせいぶん)があります。食事を適度に温めると、こうした香り成分の出方が変わり、犬猫が感じる香りも変化します。
冷蔵庫から出したばかりのウェットフードと、少し温めたウェットフードは、原材料が同じでも、犬猫に届く香りが同じとは限りません。
開封した翌日に食べたがらない時も、「飽きた」「嫌いになった」とすぐ決めず、冷たさや香りの違いが関係していないかを考えてみる価値があります。
高齢猫では、温かいウェットを好んだ研究がある
高齢猫32頭を対象に、同じウェットフードを6℃、21℃、37℃で比べた研究があります。
この研究では、猫は平均として、6℃より21℃、21℃より37℃のフードを好みました。37℃の食事で最も食べる量が多く、温度によって複数の香り成分の放出も変化していました。
温めることで香りや風味がより魅力的になった可能性が考えられています。また、体温に近い食事が、猫にとって本来の獲物を思わせるのではないかという考え方もあります。
ただし、この研究で分かったのは、特定のウェットフードを食べた高齢猫の平均的な好みです。37℃がすべての猫、すべての犬にとっての正解ではありません。冷たい方や室温の方を好む子もいます。
犬も、温めると食べやすくなる?

犬でも、香り、食感、温度は食事の好みに関わると考えられています。犬は食べ物の香りをよく利用するため、少し温めて香りを立たせることが、食べ始めるきっかけになる子もいます。
一方で、猫のように「何℃が最も好まれる」といえる犬の研究は限られています。犬でも猫でも、温かいごはんを好きな子、常温を好む子、冷たいままでもよく食べる子がいます。
温めることは、「温かい方が必ずおいしいから」ではなく、その子にとって食べやすい状態を探す工夫の一つと考えましょう。
冷たいウェットを食べても、大丈夫?
冷蔵庫から出したウェットフードを食べたからといって、健康に悪いわけではありません。冷たいままでも喜んで食べる犬猫なら、必ず温める必要はありません。
ただし、冷蔵保存していた残りのウェットやパウチを食べたがらない時は、室温へ少し戻す、またはほんのり温めて香りを立たせてみるのもよいでしょう。
とくに年齢を重ねて、以前よりごはんへの反応がゆっくりになった子では、フードをすぐ変える前に、温度を変えて反応を見ることが役立つ場合があります。
食欲がない時ほど、温めればよいとは限らない
吐き気がある犬猫では、食べ物の強い香りを嫌がることがあります。その場合、温めて香りが強くなることで、かえって食べたくなくなることもあります。
「香りを立たせれば必ず食欲が出る」わけではありません。温めた時に顔をそらす、近付かない、吐き気のようなしぐさが増えるなら、無理に勧めず、その子の反応を優先しましょう。
急に食欲が落ちた、体重が減った、食べたそうなのに食べない、口からこぼす、片側だけで噛む、吐く、下痢、元気がない、水を飲む量が変わったといった時は、「温めたら少し食べたから大丈夫」と決めつけないことも大切です。痛みや病気が隠れている可能性もあるため、動物病院へ相談しましょう。
何℃くらいに温めればいい?
家庭で、必ず37℃にしなければいけないわけではありません。目安は、冷たさが取れて、ほんのり温かいと感じる程度です。
熱々にする必要はありません。目的は食事を調理し直すことではなく、食べる時の温度と香りを少し変えることです。
電子レンジを使う時は、必ずフードを電子レンジ対応の器へ移します。缶やパウチをそのまま電子レンジに入れることは避けてください。
短時間ずつ温め、よく混ぜて加熱ムラをなくし、飼い主さんが触って熱くないことを確認してから与えましょう。一部だけ熱くなっていると、口の中をやけどするおそれがあります。
ぬるま湯を加える方法もある
ドライフードやウェットフードへ少量のぬるま湯を加える方法もあります。食事の温度を少し上げながら、香りを立たせ、水分も一緒に取れるのがよいところです。
ただし、温めたり水分を加えたりした食事は、乾いたドライフードより傷みやすくなります。食べ残しを長時間置きっぱなしにせず、製品に記載された保存方法に従いましょう。
また、加熱に注意が必要なサプリメントやトッピングを使っている場合は、製品の使用方法を確認してから加えてください。
温かいごはん=消化がよくなる、ではない
温めると消化率が大きく上がる、胃に必ずやさしい、とまではいえません。
今回の主な目的は、香りや嗜好性を変えて、食べ始めるきっかけを作ることです。冷たい食事が胃に悪く、温かい食事なら消化によいと単純に分ける必要はありません。
“うちの子の好きな温度”を見つけてみよう
同じウェットフードでも、冷蔵庫から少し出しておいたもの、室温のもの、ほんのり温めたものでは、反応が変わることがあります。
別の日に、いつもと同じ量で、次のような様子を観察してみましょう。
– 香りを嗅いですぐ食べ始めるか
– 一度離れてから戻るか
– 食べ終わるまでにかかる時間
– 食べ残しがあるか
一度だけで「この温度が好き」と決めず、何度か様子を見ると、その子の好みが見えてくるかもしれません。
まとめ|温度も、その子らしい食べやすさの一つ
犬猫の食欲は、味だけでなく、香り、食感、水分量、温度など、さまざまな要素に支えられています。食事を少し温めると香りの届き方が変わり、食べ始めやすくなる子もいます。
猫では温かいウェットフードを好んだ研究がありますが、温かいごはんがすべての犬猫に合うわけではありません。冷たいもの、常温、ほんのり温かいもの。その子が一番よく食べる状態を知ることが大切です。
毎日食べている同じごはんでも、温度が変われば香りの届き方も変わります。「何を食べるか」だけでなく、「どんな状態ならこの子が食べやすいか」。そんな小さな工夫も、特に年齢を重ねた犬猫の“食べる”を支える一つの方法です。
この記事が参考になったら、「いいね」で教えてください
その他のコラム
Other Columns
-
フードの原材料、全部説明できますか?|“知らない名前=危険”ではない。原材料表の読み方
-
フード選びの「本当?」|避けているそれ、実は誤解かもしれません
-
犬・猫の腸活はなぜ大切?|「吸収できる体」が全身の健康をつくる
-
ドッグフード・キャットフードの選び方ガイド|原材料表示の読み方と注意点
-
アレルギー検査で陽性=食べちゃダメ?|犬猫の食物アレルギーと食事選び
-
犬・猫のドライフードは「ふやかす」べき?|メリット・正しいやり方と与え方のコツ
-
βグルカンって何?|「免疫」と関わる注目成分と、酵母・きのこ・大麦の違い
-
犬猫の必要カロリーは毎日同じではない|体重だけで決めない給与量の話
