換毛期はなぜあんなに毛が抜ける?|犬猫の毛が生え替わる仕組み
床にふわふわとたまる毛、ブラッシングで取れる山のような抜け毛。「こんなに抜けて大丈夫?」と、換毛期になるたびに驚く飼い主さんも多いのではないでしょうか。
犬や猫の毛は、ずっと伸び続けているわけではありません。毛には生まれて、伸びて、役目を終えて抜け、新しい毛へ入れ替わる周期があります。換毛期は、その入れ替わりが季節に合わせて目立ちやすくなる時期です。
この記事では、犬猫の毛が生え替わる仕組み、秋の抜け毛が増える理由、ブラッシングのコツと、換毛期だけでは片付けない方がよい変化を紹介します。
毛は、ずっと伸び続けているわけではない
犬猫の毛には、毛周期(もうしゅうき)という生え替わりのサイクルがあります。
– 成長期(せいちょうき):毛が伸びる時期
– 退行期(たいこうき):毛の成長がゆるやかに止まり、次の段階へ移る時期
– 休止期(きゅうしき):毛根が休み、古い毛が抜けていく時期
毛包(もうほう:毛を作る皮膚の器官)は、このサイクルをくり返しています。抜け毛は、毛根が弱ったという意味だけではありません。古い毛を手放し、新しい毛へ入れ替わる正常な変化でもあります。
換毛期には、毛周期がまとまって動く
普段も少しずつ毛は抜けていますが、季節が変わる頃には、多くの毛包が似た時期に毛周期を進めます。そのため、古い毛がまとまって抜け、いつもより抜け毛が目立ちます。
犬では春と秋に抜け毛のピークが見られることが知られています。春には冬に増えた保温性の高い毛が減り、秋には寒い季節に向けて被毛全体の構成が少しずつ変わっていきます。
換毛期に毛がたくさん抜けるのは、毛が弱っているからではありません。季節の変化に合わせて、からだが次の季節の被毛へ着替えている途中なのです。
犬猫は、どうやって季節の変化を知るの?
犬猫はカレンダーを見て秋を知るわけではありません。大きな手がかりの一つは、日が長くなった・短くなったという日照時間の変化です。気温、明るさ、生活環境も、毛の生え替わりに関わります。
毛の成長には、栄養状態や体の中のホルモンも影響しています。季節だけで機械的に毛が抜けるのではなく、外の変化と体の働きが重なって、少しずつ次の被毛へ移っていくのです。
秋は、冬毛を生やすために抜ける?
大まかには、暖かい季節向けの被毛から、寒い季節向けの被毛へ切り替わる時期と考えてよいでしょう。冬の被毛では、細かな毛が増えて毛の間に空気をため、保温しやすくなります。
ただし、秋に今ある毛がすべて抜け、その後に冬毛が一斉に生えるわけではありません。毛包ごとにタイミングが異なるため、抜ける毛と生えてくる毛が少しずつ入れ替わります。
私たちが衣替えをするように、犬猫も自分のからだで、ゆっくり次の季節を迎える準備をしているのかもしれません。
たくさん取れるのは、細かな毛があるから
犬や猫の毛穴には、太く中心になる毛のまわりに、複数の細かな毛が生えていることがあります。こうした細かな毛は、被毛の内側にあるアンダーコートの大きな部分を作っています。
ブラッシングをすると驚くほど毛が取れるのは、太い毛が一本ずつ抜けているだけではなく、こうした細かな毛がまとまって取れるためです。
とくにオーバーコートとアンダーコートの両方を持つ、いわゆるダブルコートの犬では、季節による被毛量の変化が目立ちやすい傾向があります。柴犬、秋田犬、シベリアン・ハスキー、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバーなどでは、換毛期の抜け毛に驚くこともあるでしょう。
シングルコートなら、毛が抜けない?
シングルコートと呼ばれる犬も、毛がまったく抜けないわけではありません。毛には寿命があるため、生え替わり自体は起こります。
ただし犬種や毛質によって、季節にまとめて抜けやすい子、少しずつ一年中抜ける子、毛が長く伸び続けやすい子など、毛周期の現れ方はさまざまです。抜け毛の量だけで、健康かどうかを判断することはできません。
室内暮らしでは、換毛期が分かりにくいことも
エアコン、暖房、室内照明のある環境で過ごす犬猫は、外で暮らす動物ほど日照時間や気温の変化を強く受けないことがあります。
そのため、春と秋の抜け毛がはっきりしない子や、一年を通して少しずつ毛が抜ける子がいても不思議ではありません。室内で暮らすから換毛しない、ということではなく、その子の生活環境に合わせて現れ方が変わるのです。
「秋になったのに全然抜けない」「春より少ない」と、カレンダーだけで心配しすぎず、その子のいつもの抜け方を知っておきましょう。
猫にも、換毛期はある

猫にも季節による被毛の変化があります。長毛か短毛か、外へ出るか、室内で過ごすかによって、抜け方の目立ち方は異なります。
換毛期は、猫がグルーミングで飲み込む毛も増えやすい時期です。やさしくブラッシングをして古い毛を整えることは、毛玉を防ぎ、飲み込む抜け毛を減らす助けになります。
ただし、毛玉を吐くことをくり返す、吐こうとしても出ない、食欲や元気が落ちる時は、「換毛期だから」と様子を見続けず、動物病院へ相談してください。
換毛期のブラッシングは、“取ること”より“整えること”
正常な換毛なら、抜け毛を止める必要はありません。大切なのは、古い毛を適度に取り除き、皮膚と被毛を気持ちよく整えることです。
ブラッシングには、抜け毛のケアだけでなく、皮膚の赤み、フケ、しこり、傷、被毛の変化に気付くよい機会にもなります。
毛質に合う道具を使い、やさしい力で行いましょう。アンダーコート用の道具も、強く何度も使えば、必要な毛まで抜いたり皮膚を傷付けたりすることがあります。「たくさん取れるほどよい」ではなく、愛犬・愛猫が嫌がらない範囲で整えることが大切です。
シャンプーは、汚れやにおい、毛玉の状態に合わせて行います。換毛期だからと頻繁に洗いすぎる必要はありません。皮膚の状態や犬種・猫種に合う頻度が分からない時は、獣医師やトリマーへ相談しましょう。
換毛期の抜け毛と、気を付けたい脱毛は違う
たくさん毛が抜けていても、全体として被毛が保たれ、皮膚に異常がなければ、自然な生え替わりの可能性があります。
一方で、次のような変化がある時は、「換毛期だから」と決めつけないようにしましょう。
– 地肌が見える、円形や一部分だけ毛が抜ける
– 左右対称に明らかに毛が薄くなる
– 赤み、フケ、かさぶた、皮膚のにおいがある
– 強くかゆがる、舐め続ける、掻き続ける
– 毛が途中で切れたように短くなっている
– 毛がなかなか生えてこない
皮膚の炎症、外部寄生虫、アレルギー、感染症、ホルモンの変化などが関係する場合があります。急に抜け方が変わった時や、皮膚の様子もいつもと違う時は、早めに動物病院へ相談しましょう。
まとめ|抜け毛は、次の季節を迎える準備
犬猫の毛には、成長し、休み、抜け、新しい毛へ入れ替わる毛周期があります。換毛期に抜け毛が増えるのは、季節の変化に合わせて、この周期がまとまって動くためです。
ダブルコートの犬では特に目立ちやすく、室内で暮らす犬猫では一年を通して少しずつ抜けることもあります。抜け毛を止めようとするより、その子の毛質に合ったブラッシングで気持ちよく整えてあげましょう。
毎年当たり前のように床いっぱいに落ちる毛も、よく見ると、犬猫のからだが季節を感じ取っている証拠のひとつです。愛犬・愛猫が少しずつ次の季節へ着替えていく時間を、そっと見守っていけるとうれしいです。
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