犬猫にも利き足はある?|しぐさから見える“右利き・左利き”のお話
おもちゃに前足を伸ばすとき、階段へ一歩目を出すとき、愛犬・愛猫がいつも同じ足を使っているように感じたことはありませんか。「うちの子、右利きなのかな?」という小さな発見は、毎日のしぐさをもっと楽しく見せてくれます。
じつは犬や猫にも、左右どちらかの前足を使いやすいという傾向が見られることがあります。人の右利き・左利きと同じように、脳の左右で役割が少し異なることと関わると考えられています。
ただし、犬猫の利き足は、人のように一つの動作だけで決められるものではありません。この記事では、犬猫の利き足について分かっていることと、家庭で無理なく観察する方法を紹介します。
(急に片方の足を使わなくなった、足をかばう、段差を嫌がる、触ると痛がるといった変化は、利き足ではなく痛みやケガのサインかもしれません。気になるときは動物病院へ相談してください。)
犬猫にも、“使いやすい足”はある?
犬猫でも、ある動作をするときに左右どちらかの前足を多く使う「利き足」の傾向が見られます。研究では、犬も猫も、多くの子が右または左のどちらかへ偏りを示すことが報告されています。
ただし、人では右利きの人が多いのに対して、犬猫全体で「右利きが圧倒的に多い」とは言えません。右を好む子も、左を好む子も、場面によって使う足が変わる子もいます。
大切なのは、右か左かに優劣はないことです。利き足は、その子の小さな個性のひとつ。正解を当てるテストではなく、いつもの動きをていねいに見るきっかけとして楽しみましょう。
なぜ、左右の使い方に違いが出るの?
脳は、左右でまったく同じ働きをしているわけではありません。左右の脳がそれぞれ得意な情報処理を分担することを、側性化(そくせいか)といいます。
体の動きでは、脳の左側が主に右側を、脳の右側が主に左側をコントロールします。犬猫の前足の使い方に偏りが出ることも、こうした脳の左右差と関係すると考えられています。
ただし、「右利きだから社交的」「左利きだから怖がり」といった単純な性格診断はできません。利き足と行動・ストレスの関係を調べる研究はありますが、犬猫の性格や健康を片方の足だけで判断することはできないのです。
どんなしぐさで、利き足が見えやすい?
一度だけ見た動きでは、たまたま使いやすい場所にあった足を出しただけかもしれません。同じような場面を何度か見て、どちらを多く使うかを比べてみましょう。
おもちゃや知育玩具を押さえる前足
犬がフード入りのおもちゃを押さえるとき、猫が軽いおもちゃに前足を伸ばすときは、観察しやすい場面です。左右どちらの前足で先に触るか、どちらで押さえるかを、数日かけて見てみましょう。
段差や階段の一歩目
低い段差や階段を上がるとき、最初にどちらの前足を出すかもヒントになります。ただし、繰り返しジャンプさせたり、苦手な段差を無理に使わせたりはしません。シニアや関節に不安がある子では、この観察は無理に行わないでください。
毛づくろい・顔をぬぐうしぐさ
猫では、毛づくろいや顔をぬぐうときに、使う前足を観察できることがあります。リラックスしているときの自然な動きを、そっと見守るだけで十分です。
「お手」は参考程度に
犬の「お手」も楽しい観察のひとつですが、教えるときに飼い主さんが出した手の位置や、トレーニングの習慣が影響します。お手だけで利き足を決めず、遊びや普段の動きも合わせて見てみましょう。
おうちでできる、やさしい観察方法

利き足を調べるために、特別な道具は必要ありません。安全な範囲で、同じような動きを十回ほど観察してみましょう。
– 右の前足を使った回数
– 左の前足を使った回数
– どちらとも言いにくい回数
たとえばおもちゃへ前足を出す場面を十回見て、右が八回、左が二回なら、その動きでは右を使いやすい傾向があるかもしれません。けれど、別の遊びでは左を使うこともあります。
記録するときは、遊びの種類、場所、疲れていないか、飼い主さんがどちら側にいたかも一緒に残すと、見え方が変わります。左右を比べるために、わざと苦手な動きをさせたり、何度も同じ動作を求めたりする必要はありません。
オス・メスで違いはある?
猫では、メスは右の前足を好み、オスは左の前足を好む傾向を示した研究があります。ただし、これはあくまで集団で見られた傾向です。すべてのメス猫が右、すべてのオス猫が左になるわけではありません。
犬については、猫ほど一貫した性別による傾向ははっきりしていません。同じ犬種や性別でも、右をよく使う子、左をよく使う子、状況によって変わる子がいます。
「男の子だから左」「女の子だから右」と決めつけず、目の前のその子のしぐさを見てみる方が、ずっと面白い発見になります。
利き足と、“足をかばうこと”は別の話
普段は右の前足を使う子が、急に左しか使わなくなった。階段の一歩目が変わった。おもちゃを押さえなくなった——こうした急な変化を「利き足が変わった」と考えないでください。
痛み、関節の違和感、肉球や爪のトラブル、神経の問題などで、片方の足を使いたくない可能性があります。次のようなときは、早めに動物病院へ相談しましょう。
– 足をかばう、地面に着けたがらない
– 段差、階段、ジャンプを急に嫌がる
– 歩き方や姿勢がいつもと違う
– 触られるのを嫌がる、痛がる
– 腫れ、出血、爪や肉球の傷がある
まとめ|利き足は、その子らしさを知る小さなヒント
犬猫にも、右または左の前足を使いやすい傾向が見られることがあります。でも、右利き・左利きに優劣はなく、片方の動きだけで性格や健康を決められるわけでもありません。
おもちゃを押さえる前足、段差への一歩目、毛づくろいのしぐさ。いつもの暮らしのなかで、どちらをよく使うのかをそっと見てみると、その子だけの小さな個性に気づけるかもしれません。
遊びのなかの発見を楽しみながら、急な左右差や動きの変化には早く気づく。それが、愛犬・愛猫の“らしさ”と体を大切にする、やさしい観察になります。
この記事が参考になったら、「いいね」で教えてください
その他のコラム
Other Columns
-
犬猫にも筋肉痛はある?|運動と休養、どちらも大切な理由
-
レジスタントスターチって知っていますか?|「冷ますと腸にいいでんぷんに変わる」ふしぎな話
-
体を温める食材、冷ます食材|東洋医学の「五性」で、愛犬・愛猫のごはんを季節に寄り添わせる
-
散歩は運動だけじゃない|嗅覚・脳・気分が整う、ほんとうの散歩
-
今日のこの子に、ちょうどいい過ごし方|天気と体調に合わせる犬猫ケア
-
犬・猫が食べてはいけないもの|「なぜ危ないか」まで知る、いざという時に守れる知識
-
秋のノギ(草の芒)に注意|散歩あとで見つけたい、小さなトゲの危険
-
雨のあとに注意したい「レプトスピラ」って何?|犬を守るために知っておきたいこと
