犬猫にも“むくみ”はある?|体に水分がたまる本当の理由
愛犬・愛猫の足がいつもより太く見える。顔つきが少し違う。お腹がふくらんできた気がする。被毛に覆われている犬猫では、人のように「靴下の跡」で気づけないため、むくみは見つけにくいことがあります。
犬猫にも、むくみ(浮腫:ふしゅ)は起こります。ただし、むくみは「水を飲みすぎた」状態とは限りません。血管の中にあるはずの水分が、何らかの理由で血管の外、組織のすき間にたまりすぎた状態です。
この記事では、むくみが起こる仕組み、むくみと腹水・胸水・肺水腫の違い、家で気づきたい変化と受診の目安を解説します。
(呼吸が苦しそう、急に顔やお腹が腫れた、ぐったりしているときは、むくみかどうかを自宅で判断せず、すぐに動物病院へ連絡してください。)
むくみは、水を飲みすぎた状態ではない
体の水分は、血管の中、細胞と細胞の間、細胞の中などに分かれて存在しています。健康なときも、血管から少量の水分が組織へ出て、余分な分は血管やリンパ管へ回収されるという動きが、絶えず起きています。
むくみは、この出入りと回収のバランスが崩れ、組織のすき間に水分が必要以上に残った状態です。水分そのものが多いというより、水分を正しい場所に保ちにくくなっているサインと考えると分かりやすいでしょう。
そのため、「むくんでいるから水を飲ませない」「水を減らせば治る」と自己判断するのは危険です。見た目は水分がたまっていても、血管の中の循環が十分とは限りません。
水分が組織にたまりやすくなる、五つの仕組み
むくみにはいくつかの原因があります。専門的には複数の仕組みが重なることもありますが、まずは次の五つを知っておくと整理しやすくなります。
1.血管の中の圧力が高くなる
血管の中には、水分を外へ押し出す力があります。この圧力が高くなると、水分が組織側へ出やすくなります。
心臓の働きが低下して血液が滞る場合などが例です。ホースの中の圧力が高くなり、水が外へ押し出されやすくなるイメージです。
2.血管内に水分を保つ力が弱くなる
血液には、アルブミンというたんぱく質があります。アルブミンは、血管内へ水分を保つ力に大きく関わっています。
アルブミンが大きく低下すると、血管の中に水分を引きとめにくくなり、むくみや腹水につながることがあります。アルブミンは、単に栄養状態を見る数字ではなく、水分の居場所にも関わる大切な成分です。
3.血管が漏れやすくなる
ケガ、感染、アレルギーなどで炎症が起こると、血管の壁が一時的に水分やたんぱく質を通しやすくなります。その周囲が赤く、熱をもち、腫れることがあります。
これは全身のむくみとは限りません。虫刺されや外傷のように、一部だけが急に腫れる場合もあります。
4.リンパで回収しにくくなる
組織へ出た水分の一部は、リンパ管が回収して血管へ戻しています。リンパ管は、余分な水分を回収する排水のしくみのようなものです。
リンパ管やリンパ節に問題が起こり、回収がうまくいかなくなると、組織に水分が残りやすくなります。ただし、「リンパを流せば、どんなむくみも取れる」わけではありません。
5.原因によっては、いくつも重なる
心臓、腎臓、肝臓などの病気では、血管の圧力、アルブミン、体液の調節が複数関わることがあります。見た目だけでどの仕組みかを決めることはできないため、原因に合わせた検査と治療が必要です。
腎臓・肝臓・心臓で、むくみにつながる理由
むくみと病気の関係を知ることは大切ですが、「腎臓病なら必ずむくむ」「心臓病なら足が腫れる」と考える必要はありません。どの病気でも、すべての子に起こるわけではないからです。
腎臓|たんぱく質が尿へ漏れる場合がある
腎臓のフィルターが傷むと、本来は血液中に残したいたんぱく質が尿へ漏れることがあります。たんぱく質を多く失えばアルブミンも下がり、水分を血管内に保ちにくくなって、むくみにつながる場合があります。
これは「腎臓が水を出せなくなったから、むくむ」だけではないということです。たんぱく質を失うことが関係する場合もあります。
肝臓|アルブミンを作る力と、血流の変化
アルブミンは主に肝臓で作られます。重い肝機能の低下では、アルブミンを十分に作れなくなることがあります。また、肝臓の病気でお腹まわりの血流に影響が出れば、腹水につながることもあります。
心臓|血液が滞ることで起こることがある
心臓が血液を十分に送れなくなると、静脈側で血液が滞り、水分が血管の外へ出やすくなることがあります。心不全では、病気の部位や犬猫の違いによって、肺水腫、胸水、腹水、皮下のむくみなど、たまり方も異なります。
むくみ・腹水・胸水・肺水腫は、たまる場所が違う

どれも体液が本来より多くたまった状態ですが、同じものではありません。
| 呼び方 | 水分がたまる場所 |
|---|---|
| 浮腫(むくみ) | 皮下など、組織のすき間 |
| 腹水 | お腹の空間(腹腔) |
| 胸水 | 肺の外側にある空間(胸腔) |
| 肺水腫 | 肺の組織や肺胞の周辺 |
胸水と肺水腫は、どちらも呼吸が苦しくなることがありますが、水分がたまる場所も対応も異なります。呼吸の変化があるときは、触ったりマッサージしたりせず、早めの受診を優先してください。
犬猫のむくみは、どう見つける?
被毛がある犬猫では、むくみがはっきり見えないこともあります。次のような「いつもとの違い」を見てみましょう。
– 足先や足全体がいつもより太く、腫れぼったく見える
– 顔、まぶた、口元が急に腫れた
– 左右で足の太さが違う
– お腹が急にふくらんだ、皮膚が張って見える
– 数日で体重が増えた
– 皮膚をそっと押すと、へこみが少し残ることがある
皮膚を押したあとにへこみが残る状態を、圧痕性浮腫(あっこんせいふしゅ)といいます。ただし、家庭でむくみを診断するために何度も押す必要はありません。痛がる場所や急に腫れた場所は触らず、写真に残して動物病院で見てもらいましょう。
片足だけ・顔だけ・お腹だけ|見方は同じではない
片足だけが急に腫れた場合は、ケガ、虫刺され、感染、炎症、リンパや血流の問題など、局所的な理由が考えられます。左右両方の足や体の広い範囲が腫れぼったい場合は、全身の状態と関係することもあります。
顔が急に腫れた場合は、アレルギー反応のこともあります。お腹が大きくなった場合も、脂肪だけでなく、腹水、ガス、臓器の腫れ、腫瘤(しゅりゅう:しこりやできもの)など、さまざまな原因があり得ます。
脂肪は通常、一日二日で急に大きく増えるものではありません。急な体重増加や体の形の変化は、様子見だけにせず相談しましょう。
むくみがあっても、水・塩分・利尿薬を自己判断で変えない
「水がたまっているなら水を減らそう」「塩分を減らせばよい」「人用の利尿薬で水を出せないかな」と考えるのは危険です。
心臓病などで食事中のナトリウムを調整したり、利尿薬を使ったりすることはあります。しかし、原因によって必要な治療は違い、低アルブミンが主な問題なら、水を出すだけで解決するわけではありません。
同じように、アルブミンが低いからといって、肉やたんぱく質だけを増やせばよいとも限りません。肝臓で作りにくい、腎臓や腸から失っているなど、原因を確認することが先です。
こんなときは、すぐに動物病院へ
次のような様子があれば、「むくみかな」と様子を見ず、救急対応ができる動物病院へ連絡してください。
– 呼吸が速い、苦しそう、横になれない
– 舌や歯ぐきが青白い・紫っぽい
– 急に顔が腫れた、腫れが短時間で広がる
– お腹が急に大きくなり、苦しそう
– ぐったりしている、立てない、倒れる
– 腫れに加えて、嘔吐や下痢、強い痛みがある
まとめ|むくみは、“水分の居場所”からのサイン
犬猫にもむくみはありますが、水を飲みすぎたから起こるとは限りません。血管内の圧力、アルブミン、血管の炎症、リンパによる回収などのバランスが崩れ、水分が組織に残りすぎることで起こります。
足だけ、顔だけ、お腹だけなど、腫れる場所と速さによって考え方は異なります。水分制限、塩分制限、利尿薬、たんぱく質の追加を自己判断で始めず、気になる変化は写真や体重の記録とともに獣医師へ伝えましょう。
いつもの足の太さ、お腹の形、顔つき。普段の姿を知っているからこそ、小さな変化に気づけます。むくみを「水分が多いだけ」と片付けず、その子の体が伝えているサインとして、やさしく見守ってあげてください。
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