フード選びの「本当?」|避けているそれ、実は誤解かもしれません
愛犬・愛猫のフードを選ぶとき、パッケージや口コミを見て「これは避けたほうがいいのかな」と手を止めた経験はありませんか。
大切な家族の口に入るものだから、慎重になるのは当然のこと。でも、情報があふれる時代だからこそ、中には少し行きすぎた、あるいは不正確な情報もまぎれています。「これは体に悪い」という強い言葉に触れて、なんとなく不安になり、良いものまで遠ざけてしまう——そんなことも起こりがちです。
この記事では、フード選びでよく「避けたほうがいい」と言われるけれど、じつは誤解が含まれている4つのテーマを取り上げます。「よく聞く話」と「本当のところ」を並べて、フェアに検証していきます。読み終えたとき、少し肩の力が抜けて、落ち着いてフードを選べるようになっていたら、うれしいです。
(大前提として、ここでお話しするのは”一般論”です。実際にアレルギーや持病がある子は、かならずかかりつけの獣医師の指示を優先してください。)
その1|「オイルコーティングはすぐ酸化するから避けるべき」?

よく聞く話:フードの表面が油でコーティングされていると、その油がすぐに酸化してしまう。だからオイルコーティングされたフードは避けるべき。
本当のところ:これは、大きな誤解を含んでいます。
オイルコーティングとは、フードの製造の最終工程で、粒の表面に油を吹きつける処理のこと。じつは、ちゃんとした理由があります。ひとつは、オメガ3脂肪酸のような熱に弱い良質な油を、壊さずに配合するため。こうした油は、フードを高温で加工する工程でいっしょに加熱すると壊れてしまうので、加熱後の粒に、あとから吹きつけるのです。もうひとつは、脂溶性ビタミンのように熱で失われやすい栄養素を、加熱後にあとから補うため。つまりオイルコーティングは、熱に弱い大切な栄養を”守って届ける”ための、理にかなった製法でもあるのです。
では、「表面に油があるとすぐ酸化するのでは?」という心配はどうでしょうか。たしかに、油が空気に触れれば酸化は進みますが、それはオイルコーティングに限らず、脂質を含むフードすべてに言えることです。むしろオイルコーティングは、熱に弱い油を製造の段階で酸化させないための工夫でもあり、近年は真空状態で油を吹きつけて酸化を抑えながら粒の奥まで浸透させる技術も登場しています。そのうえで、酸化防止の処理や密閉包装がされているのが一般的です。つまり、酸化のカギを握るのは”コーティングの有無”そのものより、開封後にどう保存するか(空気に触れさせない・涼しく・早めに使い切る)のほう。もちろん、粗悪な油でにおいをごまかすような使い方は問題ですが、「オイルコーティング=すぐ酸化する悪いもの」と一括りにするのは正確ではありません。大切なのは、コーティングの有無より、”どんな油が、何のために使われているか”なのです。
なお、「表面の油は洗い流したほうがいいのでは?」と気になる方もいるかもしれません。でも、ここは少し立ち止まりたいところです。前述のとおり、表面の油には、オメガ3のような機能性の脂質や、脂溶性ビタミン(A・D・Eなど)が含まれていることが多く、なかには、あとから栄養を補う目的で有用な成分をこの工程で加えているフードもあります。それを洗い流してしまうと、せっかく届けようとしている栄養まで、一緒に流してしまうことになりかねません。酸化が気になるなら、洗い流すよりも、開封後の保存を工夫して早めに使い切るほうが、栄養を保ったまま安心して与えられます。
その2|「穀物は犬猫に悪い。アレルギーの元」?
よく聞く話:犬や猫は肉食動物だから、穀物は消化できず体に悪い。アレルギーの原因にもなるから、グレインフリー(穀物不使用)が理想。
本当のところ:ここは、詳しい方ほど「なるほど」と思っていただける話です。
まず、穀物アレルギーは、思われているほど多くありません。犬の食物アレルギーの原因を調べた研究では、上位に来るのは牛肉・乳製品・鶏肉・卵といった動物性タンパク質です。小麦などの穀物が原因になることもありますが、割合としては多数派ではありません。「アレルギーが心配だから穀物を抜く」という発想は、原因の順番から見ると、少しずれているのです。そして、人のセリアック病(グルテンによる病気)のような反応は、犬や猫では基本的に起こりません。
また、多くの犬は穀物をしっかり消化できます。穀物には、エネルギー源になる炭水化物のほか、食物繊維やビタミンも含まれ、むしろ有用な食材になりえます。じつは「穀物 vs 肉」という対立自体が誤解で、グレインフリーのフードの多くは、穀物の代わりに豆類を使っています。つまり実態は「穀物 vs 豆」。どちらが優れているとは、一概には言えません。
もちろん、穀物にアレルギーがある子には、穀物を避けることに意味があります。大切なのは、”穀物だから悪い”と決めつけるのではなく、その子に合っているかどうかで選ぶこと。健康な子にとって、穀物は避けるべき悪者ではありません。
その3|「完全無添加のフードが理想。添加物はすべて悪」?
よく聞く話:添加物は体に悪いものだから、「無添加」「添加物ゼロ」のフードがいちばん安全で高品質。
本当のところ:「添加物ゼロ」は理想的に聞こえますが、じつは完全に添加物ゼロの総合栄養食は、ほぼ存在しません。
というのも、犬や猫が健康を保つために必要な栄養基準を満たすには、原材料だけでは不足しがちなビタミンやミネラルを、あとから添加する必要があるからです。たとえばビタミンDやE、亜鉛などは、自然の食材だけで安定して必要量を供給するのが難しく、ほぼすべての総合栄養食に添加されています。これらは”体に悪い添加物”どころか、その子の健康を支えるために欠かせない添加物です。
もう少し具体的に見てみましょう。添加物は、その役割によって、大きく「あってよいもの」と「できれば避けたいもの」に分けて考えられます。
健康を支える・意味のある添加物(あってよい)
・ビタミン類、ミネラル類(アミノ酸キレートなど)……栄養基準を満たすために必要
・天然由来の酸化防止剤……ミックストコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)、ローズマリー抽出物など。フードの酸化を防ぐ大切な役割
できれば避けたい添加物
・合成の酸化防止剤……BHA、BHT、エトキシキンなど。動物実験で発がん性が報告されたものもあり、避けられるなら避けたい種類です
・合成着色料……赤色〇号、青色〇号などの「タール色素」。犬や猫は色でごはんを選ばないので、そもそも必要のないもの。私たち飼い主に”おいしそう”と見せるための色づけにすぎません
・発色剤……亜硝酸ナトリウムなど。肉の色を鮮やかに見せる目的で、これも犬猫には不要
・合成甘味料……食いつきをよくするために使われることがありますが、栄養面では必要ないもの
とくに合成着色料は、知っておく価値があります。たとえば「赤色3号」は、動物実験(ラット)で発がん性が報告されたことを受けて、アメリカのFDAが2025年に食品への使用禁止を決めました(EUでは以前から制限されています)。「赤色40号」なども、海外では規制や議論の対象になっています。※ただし、日本の消費者庁やFDAは「これはラット特有の反応で、人での健康影響は科学的に確定していない」との見方も示しており、”口にした瞬間に危険”という話ではありません。とはいえ、着色料は犬猫の健康にとって何のメリットもない、見た目のためだけの添加物。わざわざ議論のある成分を、意味なく取り入れる理由はない、と考えるのが自然です。
こうして並べると見えてくるのは、避けたいものの多くが「犬猫のためではなく、見た目や食いつきを”演出”するための添加物」だということ。逆に、栄養や保存という”意味のある目的”を持つ添加物は、むやみに怖がる必要はありません。
つまり、「添加物」とひとくちに言っても中身はさまざま。栄養を補うための添加物もあれば、避けたい種類のものもあります。「合成=すべて悪」「添加物=すべて悪」と決めつけてしまうと、かえって本質を見失います。「無添加」という言葉の響きだけで判断せず、原材料表示を見て、”何が、何のために入っているか”を見分ける——その一手間が、いちばん確かなものさしになります。
その4|「酸化防止剤(BHA・BHT)は危険な毒」?

よく聞く話:BHAやBHTといった酸化防止剤は、発がん性のある危険な物質。入っているフードは絶対に避けるべき。
本当のところ:ここは、”煽りすぎ”と”油断しすぎ”の、どちらにも寄りすぎないことが大切です。
そもそもBHA・BHTとは何でしょうか。BHA(ブチルヒドロキシアニソール)とBHT(ブチルヒドロキシトルエン)は、どちらも石油などを原料に化学的に合成された酸化防止剤です。油の酸化を防ぐ力がとても強く、少量で長く効果が続くため、フードだけでなく、人の食品や化粧品などにも古くから使われてきました。よく一緒に名前の挙がる「エトキシキン」も、同じ合成酸化防止剤の仲間です。
まず、フードには脂質が含まれる以上、酸化を防ぐ仕組みは必要です。酸化防止剤は、フードが傷んで体に害を及ぼすのを防ぐ、大切な役割を持っています。そして、「BHAはガソリンの酸化防止剤だから毒」「口にした瞬間に発がんする」といった表現は、正確ではありません。BHA・BHTは、人の食品にも使用が認められた食品添加物で、安全とされる使用量が定められています。
そのうえで、「気をつけたい」という感覚には、根拠があります。BHAは動物実験で発がん性が報告され、国際的な機関から「発がんの可能性がある」と位置づけられています。BHTやエトキシキンにも、安全性を問う議論があります。そして何より、フードは人の食品と違い、同じものを毎日、何年も食べ続けるもの。「時々摂る」前提の基準が、生涯にわたる摂取のリスクまで見通しきれているとは限りません。
だからこそ、結論はシンプルです。過度に「毒だ」と怖がる必要はないけれど、避けられるなら避けたい。ビタミンE(トコフェロール)やローズマリー抽出物といった天然由来の酸化防止剤で、同じ「酸化を防ぐ」目的は十分に果たせます。同じ役割を、より安心感のある手段で果たせるなら、そちらを選ぶのが賢明です。原材料表示にBHA・BHT・エトキシキンの名前を見つけたら、少し立ち止まってみてください。
まとめ|「危険」の一言に、振り回されないために
フード選びには、たくさんの情報が飛び交っています。今回見てきたように、「避けたほうがいい」と言われるものの中にも、よく調べると誤解だったり、事実はもっと繊細だったりするものがあります。
オイルコーティングは、良質な油を守る製法でもあり、「=悪」ではないこと。穀物は、多くの子にとってアレルギーの主犯ではなく、有用な食材になりうること。「完全無添加」はほぼ不可能で、健康に必要な添加物もあること。酸化防止剤は、必要な役割を持つ一方、合成のものは避けられるなら避けたいこと。
共通して言えるのは、「〇〇=悪」という単純なレッテルではなく、”何が、何のために、どう使われているか”で見る、ということです。不安を煽る言葉にも、安心させすぎる言葉にも振り回されず、自分の目で確かめる。その落ち着いたまなざしこそが、大切な家族の食卓を、いちばん確かに守ってくれます。
情報の海の中で、迷ったり、立ち止まったりするのは、それだけその子を大切に思っている証です。今日知ったことが、次にフードを選ぶときの、小さな自信になりますように。その積み重ねが、その子との健やかな毎日を、そっと支えてくれます。
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