尿のpHが高い=フードが悪い?|犬猫のおしっこから分かること
尿検査で「pHが高めです」と言われたり、市販の試験紙でアルカリ性を示したりすると、「今のフードが合っていないのかな」と不安になる飼い主さんもいるかもしれません。
尿のpH(ペーハー)は、食事の影響を受けます。でも、食べた時間、飲水量、感染、薬、採尿してから検査するまでの時間などでも変わる数字です。pHだけを見て、フードやサプリメントを急に変えることは適切ではありません。
この記事では、尿pHで分かること・分からないこと、ストルバイトとシュウ酸カルシウムで異なる考え方、そして数字と一緒に見たい大切なサインを解説します。
(頻繁にトイレへ行くのに尿が出ない、血尿、痛がる様子、元気消失があるときは、pHを測るより受診が優先です。特に尿が出ない状態は緊急のことがあります。)
そもそも、尿pHって何?
pHは、尿が酸性寄りかアルカリ性寄りかを表す数字です。pH7が中性で、7より低いと酸性寄り、7より高いとアルカリ性寄りと考えます。
ただし、尿pHは一日のなかでも変わります。朝と夜、食前と食後で同じ数字とは限りません。一回の尿検査で見たpHだけから、その子の尿路環境すべてを判断することはできないのです。
尿pHは「高い=悪い、低い=良い」という点数ではありません。尿比重(にょうひじゅう:尿の濃さ)、結晶、赤血球・白血球、細菌、たんぱく質、症状などと一緒に見て、はじめて意味が見えてきます。
食事は影響する。でも、食事だけでは決まらない
食事中のミネラルやたんぱく質、尿を酸性・アルカリ性へ傾ける成分は、尿pHに影響します。尿路ケア用のフードには、尿pHやミネラル濃度を考えて設計されているものもあります。
一方で、「この食材を食べたからpHがいくつになる」と単純には決められません。食事全体の組成、摂取量、水分量、薬、体の酸塩基バランス、尿路の状態など、複数の条件が関わります。
「pHが高いから、今のフードが悪い」と結論を急ぐ前に、いつ・どのように採った尿なのか、ほかの検査結果や症状はどうかを確認することが大切です。
食後は、一時的にアルカリ側へ動くことがある
食事をすると、胃では胃酸が分泌されます。その過程で体のバランスを保つため、腎臓からアルカリ性の成分が尿へ出やすくなり、食後数時間の尿pHが一時的に高くなることがあります。これを、食後アルカリ潮(しょくごアルカリちょう)と呼びます。
犬では食後に尿pHが上がり、数時間後に変化の山を迎えることがあります。猫でも、食事量が大きいほど食後のpH上昇が大きくなった研究があります。
たとえば朝ごはん前のpH6.2と、食後しばらくして測ったpH7.2を比べて、「急に悪くなった」とは言えません。経過を比べる必要があるときは、採尿する時間帯や食後の経過時間を、できるだけそろえると見えやすくなります。
アルカリ性の尿は、感染でも起こる
尿路感染を起こす細菌のなかには、尿をアルカリ性へ変えやすい種類があります。つまり、尿pHが高いときは、食事の影響だけでなく、尿路で細菌が増えていることが原因の一つになる場合もあります。
犬では、このような細菌による尿路感染が、ストルバイト結石と関わることが多くあります。つまり、尿pHが高い背景には、食事だけでなく感染が隠れていることもあるのです。その場合は、pHを下げることだけでは足りません。尿検査や尿培養などで細菌の有無を確認し、必要に応じて獣医師が感染の治療を進めます。
「pHが高いからフードを変えよう」だけでは、感染を見逃してしまうことがあります。頻尿、血尿、排尿時の痛み、尿のにおいや様子の変化があるときは、早めに相談しましょう。
ストルバイトは、犬と猫で同じではない
ストルバイトは、マグネシウム・アンモニウム・リン酸からなる結晶や結石です。アルカリ性の尿は、ストルバイトができやすい条件のひとつです。
犬では、感染が関わることが多い
犬のストルバイト結石は、多くの場合、尿路感染と関連します。食事の調整が必要になることもありますが、感染があればその治療も欠かせません。
猫では、感染を伴わない例が多い
猫のストルバイトは、感染を伴わない「無菌性」のものが多く見られます。食事、水分量、尿の濃さなどを含めて管理を考えることがありますが、犬と同じ理由・同じ対策とは限りません。
ストルバイトが心配でも、自己判断で尿を酸性に傾けるサプリメントを足すことは避けましょう。療法食で結石を溶かす治療をしている場合は特に、トッピングやおやつも含めて主治医の指示を優先してください。
「酸性なら酸性なほどよい」わけではない
結晶・結石には、ストルバイト以外にもシュウ酸カルシウム、尿酸塩、シスチンなど、さまざまな種類があります。できやすい尿の環境や、治療の考え方も同じではありません。
たとえば、シュウ酸カルシウム結石はストルバイトのように食事だけで溶かすことはできません。酸性の尿でできやすい傾向があるため、「ストルバイトが怖いから、できるだけ酸性にしよう」という考え方は、かえって別の問題につながることがあります。
「pH6なら理想」「pH6.5なら安心」と数字だけを覚えるのではなく、その子が犬か猫か、どんな結石歴があるか、感染はあるか、尿がどれくらい濃いかまで含めて考えることが大切です。
結晶が見つかっても、結石とは限らない

尿の中に結晶が見つかることを、結晶尿(けっしょうにょう)といいます。結晶尿は結石のリスクを考える手がかりにはなりますが、結晶があることだけで、膀胱などに結石があるとは決まりません。
健康な犬猫でも結晶が見つかることがあります。反対に、結石があっても、そのとき採った尿には結晶が見えないことがあります。結石の有無や種類を調べるには、必要に応じてレントゲン検査や超音波検査なども行います。
pHばかり気にして、水分を忘れない
結晶や結石の予防・再発予防を考えるうえで、水分補給は大切な土台のひとつです。尿が濃く、膀胱に長くとどまるほど、結晶の材料が集まりやすくなることがあります。
水分をとる目的は、尿pHを酸性にすることではありません。尿を薄めて尿量を増やし、排尿する機会をつくることです。たとえるなら、少ない水で濃いジュースを作るより、多くの水で薄めた方が、尿の中の結晶の材料が密集しにくくなります。
水を飲みやすい場所に複数置く、毎日新鮮な水へ替える、食事から水分をとりやすいウェットフードを取り入れるなどは、日常でできる工夫です。愛犬・愛猫が無理なく水分をとれる方法を見つけることは、尿路の健康を支えることにつながります。
ただし、心臓や腎臓などの病気がある子、療法食を食べている子では、水分や食事の管理に個別の指示があることもあります。急に食事を変えたり、無理に飲ませたりせず、まず主治医に相談しましょう。
採った尿は、できるだけ早く病院へ
尿は採った瞬間の状態を保ち続けるわけではありません。細胞や細菌などの様子は時間とともに変化し、結晶が新しく出てくることもあります。
尿検査は、できれば採取後30分以内の評価が理想です。すぐに病院へ持って行けない場合は、清潔な容器に入れ、保存方法と持参のタイミングを事前に動物病院へ確認しましょう。冷蔵保存が案内されることもありますが、冷やすことで検体の中に結晶ができる場合もあります。
検査時には、採った時間、食前か食後か、冷蔵したかどうかを伝えてください。こうした条件は、検査結果を読む助けになります。
市販のpH試験紙は、“傾向”を見るもの
市販のpH試験紙は、家庭で傾向を見るための目安にはなります。ただし、試験紙で測るpHにはおおよそ±0.5程度の誤差があります。6.5と出ても、ぴったり6.50だと考えることはできません。
健康な犬猫すべてが、毎日pHを測る必要はありません。結石の治療や再発予防などで獣医師から指示がある場合に、同じ製品・似た条件で記録すると役立つことがあります。数字に一喜一憂せず、症状やほかの検査と一緒に見ましょう。
pHより先に、受診を考えたいサイン
次のような様子があるときは、pHの数字を確認するより、動物病院への相談を優先してください。
– 何度もトイレへ行く、何度も排尿姿勢をとる
– 少量しか出ない、まったく出ない
– 血尿、濁り、強いにおいがある
– 排尿時に痛そう、鳴く
– 陰部を頻繁になめる、トイレ以外で排尿する
– 元気や食欲がない、嘔吐している
とくに、何度も排尿しようとするのに尿が出ない場合は、尿道閉塞(にょうどうへいそく)の可能性があります。短時間で命に関わることもあるため、すぐに受診してください。
まとめ|尿pHは、体を知るための手がかりのひとつ
尿pHは食事の影響を受けますが、食べた時間、感染、水分、薬、採尿条件などでも変わります。高い・低いだけでフードの良し悪しや、健康状態を決めることはできません。
犬のストルバイトでは感染が関わることが多く、猫とは同じように考えられません。結石を心配するなら、pHだけでなく、尿比重、結晶、細菌、尿量、症状を合わせて見ることが大切です。
数字を見ることは、愛犬・愛猫の体を知るための大切な手がかりです。でも、その数字だけでごはんを変えたり、サプリメントでpHを動かしたりする前に、「なぜ今このpHなのか」を獣医師と一緒に考えていきましょう。
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