犬・猫とビタミンの話|人の「体にいい」が、そのまま通じないビタミンのはなし
「ビタミン」と聞くと、なんとなく体に良さそう、というイメージがありますよね。でも、犬や猫にとってのビタミンには、私たち人間の常識がそのままは通じない、意外な事実がたくさんあります。
たとえば——犬と猫は、ビタミンCを自分の体でつくれること。猫は、にんじんを食べてもビタミンAをつくれないこと。「良いものだから」とレバーをあげ続けると、かえって体に負担になることがあること。どれも、知っているといないとで、日々の食事の選び方が少し変わってくる話です。
ビタミンは、体を動かすための”潤滑油”のような存在です。必要な量はごくわずかですが、なければ体がうまく働かず、逆に摂りすぎても不調につながることがあります。この”ちょうどよさ”が、ビタミンの面白くも難しいところです。
この記事では、まず犬・猫のビタミンにまつわる「へぇ」と言いたくなる豆知識を紹介し、後半で13種類のビタミンを一覧できる保存版ガイドをお届けします。頭の片隅に置いておくと、きっとどこかで役に立つはずです。
まず知っておきたい、ビタミンの基本
ビタミンは、大きく2つのグループに分けられます。この違いを知っておくだけで、後の話がぐっとわかりやすくなります。
脂溶性ビタミン(A・D・E・K)
油に溶けるタイプです。体の中に蓄えられる性質があり、余った分は肝臓などにたまっていきます。切らしにくい反面、摂りすぎると排出されにくく、過剰症を起こすことがあるのが特徴です。
水溶性ビタミン(B群・C)
水に溶けるタイプです。余った分は尿として排出されるため、比較的過剰になりにくい一方、体にためておけないので、こまめに摂る必要があります。また、水に溶けて流れ出たり、熱で壊れたりしやすいという弱点もあります。
この「たまる脂溶性」と「流れる水溶性」という性質の違いが、実は与え方のコツに直結します。
犬・猫のビタミン、ここが「へぇ」

① 犬と猫は、ビタミンCを自分でつくれる
人間は、ビタミンCを体内でつくれないので、野菜や果物から摂る必要があります。だから「ビタミンC=積極的に摂るもの」というイメージが強いですよね。
ところが、犬と猫は、ブドウ糖からビタミンCを自分の体で合成できます。そのため、健康な子であれば、サプリメントであえて足す必要は基本的にありません。「人にいいから」と犬猫にそのまま当てはめると、ずれてしまう代表例です。
さらに気をつけたいのが、サプリメントなどで摂りすぎると、かえって尿路結石のリスクにつながる可能性があるという点です。ビタミンCは体内でシュウ酸に変わる前段階の物質になり、そのシュウ酸がカルシウムと結びついてできる「シュウ酸カルシウム結石」との関連が指摘されています。近年、犬猫ではこのタイプの結石が増えており、薬や食事では溶けず、外科的な処置が必要になることもあります。そのため動物病院では、結石の予防や管理をしている子に、ビタミンCを多く含むサプリメントを控えるよう伝えることがあります。良かれと思っての一手間が裏目に出ることもある、という意味でも覚えておきたい話です。
② 猫は、にんじんを食べてもビタミンAをつくれない
にんじんやかぼちゃに含まれるβ(ベータ)カロテンは、体の中で必要に応じてビタミンAに変換されます。人や犬は、この変換ができます。ところが猫は、βカロテンをビタミンAに変える能力を持っていません。
そのため猫は、ビタミンそのものの形(レバーや魚などの動物性食品に含まれる形)で摂る必要があります。猫が完全な肉食動物であることが、こんなところにもあらわれています。
③ 犬も猫も、日なたぼっこではビタミンDをつくれない
人間は、日光を浴びると皮膚でビタミンDをつくることができます。「日光浴は体にいい」と言われるのは、このためでもあります。
でも犬や猫は、いくら日なたぼっこをしても、皮膚でビタミンDを十分につくることができません。気持ちよさそうに日を浴びている姿からは意外ですが、犬も猫も、ビタミンDは食事から摂るべき栄養素なのです。
④ 「良いレバー」も、あげすぎると逆効果
レバーは栄養豊富で、犬も猫も大好きな食材です。でも、ビタミンA(脂溶性)をとても多く含むため、注意が必要です。
体重5kgほどの子なら、1日40g程度のレバーで最大許容量に匹敵するとも言われます。総合栄養食にはすでに必要なビタミンAが含まれているので、そこへレバーを足し続けると、少量のつもりでも過剰になりがちです。ビタミンA過剰症になると、骨に異常な突起ができたり、関節が痛んで歩き方がおかしくなったりすることがあり、特に猫で報告が多く知られています。「好きだから」「体に良さそうだから」の善意が、思わぬ負担になることもある——覚えておきたい豆知識です。
⑤ 水溶性ビタミンは「茹で汁ごと」がお得
ビタミンB群やビタミンCは水に溶けやすいので、野菜を茹でるとお湯の中に流れ出てしまいます。せっかくの栄養が、茹で汁のほうに移ってしまうのですね。
そこでちょっとした工夫。茹で汁ごとスープのように使ったり、蒸す・レンジで加熱するなど水にさらさない調理にすると、流れ出る分を減らせます。手作りごはんやトッピングをするときに、頭の片隅にあると得をする小ワザです。
⑥ ビタミンB群は「チーム」で働く
ビタミンB群は、B1・B2・B6・B12・ナイアシン・葉酸など、たくさんの仲間の総称です。これらは単独ではなく、互いに助け合いながらエネルギーづくりや代謝を支えています。だからこそ、どれか一つだけをたくさん摂るより、バランスよく摂ることに意味があります。
ちなみに、人や犬はアミノ酸のトリプトファン(タンパク質に含まれるアミノ酸の一種)からナイアシン(B群の一種)をつくれますが、猫はこれもできません。猫の「食事から摂らなければならないものリスト」は、犬より少し長いのです。
保存版|犬・猫の主なビタミン早わかり
ここからは、主なビタミンを一覧でまとめます。「うちの子のフードやサプリに何が入っているんだろう」と思ったときの、辞書がわりに使ってください。
脂溶性ビタミン(ためる・摂りすぎ注意)
| ビタミン | 主なはたらき | ひとことメモ |
|---|---|---|
| ビタミンA | 視覚、皮膚・被毛、粘膜の健康 | 猫はβカロテンから変換できず、動物性食品から摂る必要あり。摂りすぎ注意 |
| ビタミンD | カルシウム・リンの調整、骨の健康 | 犬猫は日光浴では十分つくれない。摂りすぎも不足も要注意 |
| ビタミンE | 抗酸化作用、細胞膜を守る | 過剰症が起こりにくく扱いやすい。エイジングケアでも注目 |
| ビタミンK | 血液を固める、骨の健康 | 腸内細菌もつくり出す。通常は不足しにくい |
水溶性ビタミン(流れる・こまめに)
| ビタミン | 主なはたらき | ひとことメモ |
|---|---|---|
| ビタミンB1(チアミン) | 糖質の代謝、神経のはたらき | 不足で神経症状が出ることも。加熱や生の魚に注意 |
| ビタミンB2(リボフラビン) | エネルギー代謝、皮膚・被毛 | 成長や皮膚の健康に関わる |
| ビタミンB6 | タンパク質の代謝、神経のはたらき | 体づくりに欠かせない |
| ビタミンB12 | 神経、血液(造血)に関与 | 主に動物性食品に含まれる |
| ナイアシン | 糖質・脂質・タンパク質の代謝 | 猫はトリプトファンから合成できず、食事から摂る必要あり |
| 葉酸 | 細胞づくり、造血 | 妊娠期に特に大切 |
| パントテン酸 | エネルギー代謝全般 | 幅広い食材に含まれる |
| ビオチン | 皮膚・被毛の健康 | 美しい毛づやに関わる |
| ビタミンC | 抗酸化作用 | 犬猫は体内で合成できる。健康なら補給は基本不要 |
余談|でも、「愛情でつながる仕組み」は同じ

ここまで「人と犬猫は違う」という話を重ねてきましたが、最後に、うれしい共通点をひとつ。
先ほど出てきたトリプトファンは、人では「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンや、睡眠に関わるメラトニンの材料になるアミノ酸としても知られています。心の安らぎにも関わる、なんだか温かい栄養素ですね。
そして、心が満たされる仕組みは、人と犬でよく似ています。麻布大学の研究では、犬と飼い主が見つめ合うと、双方で「オキシトシン(愛情ホルモン)」の分泌が高まることがわかっています。オキシトシンは、安らぎのセロトニンの分泌を促したり、不安をやわらげたりするとされる物質です。もともとは母親と赤ちゃんの間で働く絆のホルモンが、犬と人の間でも同じように働いている——長い時間をかけて、犬と人が特別な関係を築いてきた証のような研究結果です。
栄養の摂り方には人と犬猫で違いがあっても、見つめ合い、触れ合うことで幸せを感じ合える。その心は、種を越えて同じなのかもしれません。
結局、いちばん大切なこと
たくさんのビタミンを紹介してきましたが、いちばんお伝えしたいのはとてもシンプルなことです。それは、「栄養バランスの整った総合栄養食をベースにしておけば、必要なビタミンの土台は満たせている」ということ。
総合栄養食は、犬や猫が必要とするビタミンやミネラルが、過不足なく含まれるように設計されています。ですから、基本的には「あれもこれも足さなきゃ」と神経質になる必要はありません。むしろ、脂溶性ビタミンのように、良かれと思って足したものが過剰になるほうが心配なくらいです。
そのうえで、総合栄養食を土台にしながら、おかずのようにウェットフードを日替わりにしたり、その日の体調や気分に合わせて選んであげたりするのは、とてもすてきな工夫です。味に変化が生まれて食事が楽しくなり、いろいろな食材にふれることで栄養の幅も自然と広がります。土台がしっかりしているからこそ、その上で自由に彩りを添えていける——そんなイメージで向き合えると、毎日のごはんがもっと豊かになります。
一方で、ビタミンの豆知識が特に役立つのは、手作りごはんを主食にするときや、持病があって食事に配慮が必要なときです。手作り食を主食にする場合は栄養が偏りやすいので、レシピごとに獣医師や専門家に相談すると安心です。
知識は、不安になるためではなく、安心して選ぶためのものです。今日ここで知った「へぇ」が、いつかの食卓で、その子のためのちょっといい選択につながりますように。毎日ごはんを用意するその手が、いちばんのケアになります。
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