体を温める食材、冷ます食材|東洋医学の「五性」で、愛犬・愛猫のごはんを季節に寄り添わせる
「冬になると、うちの子なんだか冷えて元気がないみたい」「夏場は食欲が落ちて、ハアハアと苦しそう」——そんなふうに、季節によって愛犬・愛猫の様子が変わることはありませんか。
私たち人間の世界では、昔から「体を温める食べ物」「体を冷やす食べ物」という考え方が親しまれてきました。生姜が体を温め、夏野菜が火照りを冷ます——これは、東洋医学(中医学)の「五性(ごせい)」という考え方にもとづくものです。
じつはこの考え方、犬や猫の食事にも応用できます。もちろん、栄養学とはまったく別の”ものさし”ですが、「今日はちょっと体を温めてあげよう」「夏だから、こもった熱を冷ましてあげよう」と、季節や体調に寄り添ってトッピングを選ぶヒントになります。
この記事では、五性とはどんな考え方なのかという基本から、温める食材・冷ます食材の具体例、季節や体質に合わせた取り入れ方、そして注意点まで、やさしく解説していきます。難しく考えず、「へぇ、そんな見方があるんだ」という気持ちで読んでみてください。
最初に|これは「東洋医学の考え方」です
本題に入る前に、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。
この記事で紹介する「五性」は、東洋医学という長い歴史を持つ伝統医学の考え方です。西洋の栄養学のように「この成分が何mg」と数値で示されるものではなく、先人たちが経験の中で体系立ててきた、体と食べ物のとらえ方です。
ですから、「この食材を食べれば病気が治る」といった効果を保証するものではありません。あくまで、季節や体調に合わせて食事に彩りを添えるための、ひとつの視点として楽しんでいただければと思います。体調に不安があるときは、東洋医学に頼りきるのではなく、まず動物病院で診てもらうことが大切です。
そのうえで読んでいただくと、毎日のごはんが少し違って見えてくるかもしれません。
「五性」ってなに?

五性とは、東洋医学において、食材が体を「温める」のか「冷ます」のか、その性質を5つに分類したものです。「四気(しき)」とも呼ばれます。
具体的には、次の5つに分けられます。
| 五性 | 体へのはたらき |
|---|---|
| 熱性(ねっせい) | 体を強く温める |
| 温性(おんせい) | 体をおだやかに温める |
| 平性(へいせい) | 温めも冷やしもしない、中間 |
| 涼性(りょうせい) | 体をおだやかに冷ます |
| 寒性(かんせい) | 体を強く冷ます |
大きくとらえると、「熱性・温性」は温める食材、「寒性・涼性」は冷ます食材、そして「平性」はどちらにも偏らない食材、と考えるとわかりやすいです。
おもしろいのは、旬や見た目のイメージと、実際の性質が一致しないことがあるという点です。たとえば、夏が旬の桃は体を温める「温性」。逆に、犬の多くが好むバナナは、体を冷ます「寒性」です。「南国の果物だから体を温めそう」と思いきや、冷ます側だったりする。この意外性も、五性の面白さのひとつです。
体を温める食材(熱性・温性)
冷えが気になるとき、寒い季節に取り入れたいのが、温める性質の食材です。犬猫に与えられるものを中心に挙げてみます。
動物性の食材
鶏肉、鹿肉、鮭、あじ、いわし、かつお、えびなどが温める性質を持つとされます。特に鶏肉は、犬の手作りごはんでも使いやすい、身近な温性食材です。あじ・いわしといった青魚は、体を温めつつオメガ3脂肪酸もとれるのがうれしいところ。ちなみに、強く体を温める羊肉は、温性よりさらに上の「熱性」に分類されます。
野菜・穀類・その他
かぼちゃ、しょうが、栗、くるみ、松の実、もち米などが挙げられます。しょうがはごく少量を風味づけに使う程度にとどめますが、かぼちゃは甘みもあって喜ぶ子が多く、取り入れやすい食材です。
温める食材は、体を芯からあたため、血のめぐりを助けるとされ、冷えやすい子や、寒い季節、お腹を下しやすい子に向いていると考えられています。
体を冷ます食材(寒性・涼性)
暑い季節や、体に熱がこもっているときに取り入れたいのが、冷ます性質の食材です。
動物性の食材
馬肉、鴨肉、たこ、あさり、かになどが冷ます性質を持つとされます。
野菜・果物・その他
きゅうり、トマト、大根、ごぼう、なす、白菜、レタス、ほうれん草、小松菜、はと麦、そば、バナナ、豆腐などが挙げられます。水分の多い夏野菜や果物が多いのが特徴です。
冷ます食材は、体にこもった余分な熱をとるとされ、暑い季節や、体が火照りやすい子に向いていると考えられています。水分が多いものが多いので、夏の水分補給を兼ねられるのもうれしいところです。
どちらでもない「平性」は、日々の土台に
温めも冷やしもしない「平性」の食材は、体質や季節を問わず使いやすい、いわば土台になる食材です。
牛肉、豚肉、やぎ肉、たら、卵、じゃがいも、さつまいも、にんじん、山芋、キャベツ、ブロッコリー、大豆、納豆、りんご、いちご、はちみつなどが平性とされます。犬猫の手作りごはんの主役になるような食材が多いことに気づきます。おもしろいのは、同じ仲間でも羊肉が「熱性(強く温める)」なのに対し、やぎ肉は温めも冷やしもしない「平性」とされること。やぎ肉は高タンパク・低脂肪で鉄分が豊富、アレルギーの出にくい新奇タンパク質としても近年注目されていて、体質を選ばず使いやすい食材です。
東洋医学では、平性の食材は偏りが少なく、病中・病後や、体調が不安定なときにも取り入れやすいと考えられています。「温める・冷ます」を意識する前の、毎日のベースとして頼れる存在です。
ちなみに、五性のうち両端にある「熱性」と「寒性」は、いちばん作用の強い、いわば”効きめの強い”性質です。熱性はしょうがやシナモン、山椒のような刺激の強い食材、寒性はゴーヤやトマトのように強く冷やす食材が多く、犬猫にはそもそも少量しか使えなかったり、与えすぎるとお腹を冷やしたりしがちです。作用がおだやかで失敗が少ないのは、真ん中寄りの「温性」「平性」「涼性」。ですから犬の手作りごはんは、この3つを中心に、気楽に組み立てるくらいでちょうどよいのです。「極端な両端は、無理に使わなくても大丈夫」と考えると、肩の力が抜けます。
季節と体質で、選び方を変えてみる

五性の考え方がいちばん活きるのは、季節や、その子の体質に合わせて食材を選ぶときです。
寒い季節・冷えやすい子には、温める食材を
冬や、手足の先が冷たくなりやすい子、お腹を下しやすい子には、鶏肉やかぼちゃといった温性の食材を意識してみましょう。反対に、冬でも冷たいバナナや豆腐ばかりを与えると、体を内側から冷やしてしまうかもしれません。
暑い季節・火照りやすい子には、冷ます食材を
夏や、体に熱がこもってハアハアしやすい子には、きゅうりや大根といった冷ます食材で、余分な熱をやさしく逃がしてあげます。ただし、冷ましすぎてお腹を壊さないよう、量はほどほどに。
迷ったら、平性を土台に
「うちの子はどっちだろう?」と迷ったときは、平性の食材を中心に据えて、季節に応じて温性・涼性を少し足す、という考え方が安心です。
大切なのは、その子の様子をよく見ること。同じ犬種・同じ年齢でも、冷えやすい子もいれば、暑がりの子もいます。数字やルールより、目の前のその子の「なんとなく寒そう」「今日は暑そう」という気配を、いちばんの手がかりにしてあげてください。
取り入れるときの注意点
五性を楽しく取り入れるために、いくつか心に留めておきたいことがあります。
まず、これはトッピングや副菜レベルの工夫だということ。主食は、栄養バランスの整った総合栄養食やバランスのよい手作りごはんが基本です。そこに季節の彩りとして少量を添える、という位置づけがちょうどよいでしょう。
次に、五性の分類より前に、そもそも犬猫が食べてはいけない食材を避けることが大前提です。たとえば、温性に分類されるものの中にも、犬猫にとって危険なねぎ類などが含まれます。「温めるから」と、危険な食材を与えてしまっては本末転倒です。与える前に、その食材が犬猫に安全かどうかを必ず確認してください。
そして、体調に不安があるときは、東洋医学だけに頼らないこと。五性はあくまで健康なときの食養生の考え方です。下痢や食欲不振が続く、元気がないといったときは、食材選びで様子を見るのではなく、まず動物病院で相談しましょう。
まとめ|季節を、ごはんで感じてもらう
東洋医学の「五性」は、食材を「体を温めるもの(熱性・温性)」「冷ますもの(寒性・涼性)」「どちらでもないもの(平性)」に分ける、伝統的な食のとらえ方です。旬や見た目とは裏腹の性質を持つ食材もあり、知れば知るほど奥深い世界が広がっています。
寒い季節や冷えやすい子には鶏肉やかぼちゃで温かさを。暑い季節や火照りやすい子には、きゅうりや大根で余分な熱を逃がして。迷ったら平性の食材を土台に。そんなふうに、季節とその子の様子に寄り添って食材を選ぶと、毎日のごはんがもっと味わい深いものになります。
科学的な栄養学とは別のものさしですが、どちらが正しい・間違いということではありません。数値では測れない「季節のめぐり」を、食を通してその子と分かち合える——それが、この考え方のいちばんの魅力なのかもしれません。
春のあたたかさ、夏の涼やかさ、秋の実り、冬のぬくもり。移りゆく季節を、ごはんの中にそっと映してあげる。そんなひと工夫が、その子との毎日を、少しだけ豊かに彩ってくれます。
この記事が参考になったら、「いいね」で教えてください
その他のコラム
Other Columns
-
犬・猫の腸活はなぜ大切?|「吸収できる体」が全身の健康をつくる
-
犬・猫の熱中症対策|気温だけじゃない!湿度が危険な本当の理由と予防法
-
レジスタントスターチって知っていますか?|「冷ますと腸にいいでんぷんに変わる」ふしぎな話
-
犬・猫とビタミンの話|人の「体にいい」が、そのまま通じないビタミンのはなし
-
犬・猫の紫外線対策|皮膚だけじゃない!酸化ストレスが全身に与える影響とは
-
犬・猫の筋肉が健康を支える理由|シニアでも筋肉は増やせる?筋肉貯金と夏の運動
-
おうちでできる、愛犬・愛猫のマッサージ|「触れること」は、いちばん身近なケア
-
犬と猫はこんなに違う!一緒に暮らしてわかる行動・しぐさ・暮らしのクセ徹底比較
