犬猫はなぜ草を食べたがる?|“吐くため”だけではない植物を食べる理由
散歩に出ると、決まって草をムシャムシャ。「胃が気持ち悪いのかな?」「吐きたいのかな?」と心配になったことはありませんか。
でも実は、犬猫が草を食べる理由は“吐くため”だけではなさそうです。とくに犬では、草や植物を口にすることは珍しくなく、本来持っている行動のひとつと考えられています。
もちろん、急に草を探して食べるようになった時や、嘔吐・下痢などを伴う時には、体調不良が隠れている場合もあります。この記事では、犬猫が草を食べる理由として考えられていること、気をつけたいサイン、屋外の植物の安全性について解説していきます。
草を食べること自体は、珍しい行動ではありません
健康な犬を対象にした調査では、日常的に植物に触れる47頭のうち、79%で草やほかの植物を食べた経験がありました。さらに植物を食べる犬を対象にした大きな調査では、68%が毎日または毎週植物を食べており、もっともよく食べられていたのは草でした。
つまり、草を食べることだけで「何かがおかしい」とは限りません。散歩中に少し草を口にし、その後も元気・食欲・便の状態がいつもどおりなら、すぐに病気と結びつけなくてもよいことが多いでしょう。
ただし、食べた植物が安全かどうかは別の話です。その点は後ほど詳しくお伝えします。
「吐くために草を食べる」だけでは説明できない
「犬は胃が気持ち悪い時、吐くために草を食べる」と聞いたことがあるかもしれません。
けれど、先ほどの調査では、草や植物を食べる前によく体調が悪そうだった犬は9%、食べたあとによく吐いた犬は22%でした。多くの犬は、具合が悪そうでもなく、食べたあとに必ず吐くわけでもなかったのです。
そのため、草を食べる行動を“吐くため”だけで説明することはできません。草がのどや胃を刺激して吐くことはあり得ますが、それがすべての犬の目的とは限らないのです。
一方で、胃腸に違和感がある時に草を食べる子がいる可能性まで否定する必要はありません。
胃が気持ち悪い
↓
草を食べる
↓
吐く
という順番なら、「草を食べたから吐いた」のではなく、もともとの不調が先にあったのかもしれません。草を食べた場面だけでなく、その前後の様子を一緒に見ることが大切です。
なぜ草を食べるの?理由は一つではありません
犬猫が植物を食べる理由は、まだ一つに決まっていません。今のところ、次のようなことが関わると考えられています。
– もともと備わった行動
– においや食感を確かめる探索行動
– 草の香りや歯ごたえが好き
– 植物に含まれる成分や食物繊維が関係する可能性
– 胃腸に違和感がある時に食べることがある
野生のイヌ科動物でも、ふんや胃の内容物から植物が見つかることがあります。犬の調査でも、若い犬ほど植物を食べる頻度が高く、食べる前に体調不良を示したり、食後に吐いたりする頻度は低い傾向がみられました。
これは、植物を食べることが「病気だから起こる行動」だけではなく、好奇心や探索も含めた、犬らしい自然な行動の一部である可能性を示しています。子犬がさまざまなものを口にして確かめる姿にも、少し通じるところがあるのかもしれません。
「食物繊維が足りないから草を食べる」は断定できません
草には食物繊維が含まれるため、「フードに野菜や繊維が足りないから草を食べるのでは」と考える方もいるでしょう。
ただ、犬の調査では、食事の種類と植物を食べる頻度に明確な関連は見つかっていませんでした。ドライフードだから、野菜を食べないから、食物繊維が不足しているから草を食べる、と単純には言えないのです。
草を食べるからといって、自己判断で食事を大きく変えたり、野菜をたくさん足したりする必要はありません。食事の見直しが必要かどうかは、便の状態、体重、食欲、持病なども含めて考えましょう。
猫も草を食べます。でも、毛玉のためだけとは限りません
猫が草を食べる姿も、決して珍しいものではありません。猫でも、植物を食べる前に体調不良を示さない子が多く、食べたあとにいつも吐くわけではないことが、飼い主さんへの調査で報告されています。
「毛玉を吐くために草を食べる」とよく言われますが、長毛猫と短毛猫で植物を食べる頻度に差が見られなかったという報告もあります。もし毛を吐き出すことだけが主な目的なら、より多くの毛を飲み込みやすい長毛猫の方が、草を食べる頻度が高くなりそうです。
そのため、猫が草を食べる理由も、毛玉を吐くためだけとは言い切れません。においや食感への興味、本来の行動など、複数の理由が重なっているのかもしれません。
たまに草を食べて一度吐いたら、様子を見ていい?

たとえば、草を少し食べたあとに一度だけ吐いても、その後に元気と食欲があり、吐き気が続かず、便もいつもどおりなら、一過性のこともあります。
ただし、「草のせい」と決めつけるのは禁物です。嘔吐は、食べたもの、胃腸の炎症、異物、感染症、内臓の病気など、さまざまな理由で起こります。
「いつもの草食べ」で済ませず、動物病院へ相談したいサイン
草を食べること自体ではなく、急な変化やほかの症状に注目しましょう。
– 急に草を大量に食べ始めた
– 必死に草を探し、執拗に食べようとする
– 草を食べる量や頻度が明らかに増えた
– 草を食べる前から落ち着かない、よだれが多い、口を何度もぺろぺろする
– 嘔吐を繰り返す、毎日のように吐く
– 下痢、食欲低下、体重減少、腹痛、元気の低下がある
こうした様子があれば、「草が好きなだけ」とせず、早めに動物病院へ相談しましょう。とくに、何度も吐く、飲んだ水まで吐く、お腹を痛がる、ぐったりしている、異物や有毒植物を食べた可能性がある時は、様子見をせず連絡してください。
自然な行動でも、屋外の植物が安全とは限りません
植物を食べる行動が自然なものであっても、散歩中の草を自由に食べさせてよいとは限りません。
屋外には、犬猫に有害な植物が混じっていることがあります。また、除草剤・農薬・肥料が使われている場所、ほかの動物の尿や便、寄生虫などで汚れている土にも注意が必要です。見ただけで安全な植物か、薬剤が使われていないかを判断するのは難しいものです。
知らない植物は食べさせないことを基本に、散歩中はリードを短く持つ、草むらへ入り込む前に周囲を見るなど、その子に合った工夫をしてあげましょう。
草むらでは、ノギにも気をつけて
草むらには、食べること以外の心配もあります。イネ科植物の穂にあるノギ(芒:ぼう)は、鼻・耳・目・肉球のあいだ・皮膚などに入り込み、トラブルになることがあります。
草を食べる行動が自然だからといって、草むらで好きなだけ過ごしてよいわけではありません。散歩後は、口元だけでなく、足先や耳、目のまわり、被毛もそっと確認する習慣をつけましょう。
室内猫には、猫草を用意した方がいい?
植物に興味を示す猫には、農薬などの心配が少ない猫草を、安全な選択肢として用意する方法があります。窓辺の観葉植物や花をかじらせないための環境づくりとしても役立つことがあります。
ただし、猫草はすべての猫に必要な栄養素ではありません。食べないから不健康ということはなく、好む子に安全な選択肢をつくる、という考え方で十分です。
犬も、普段草を食べないなら、あえて「犬用の草」を与える必要はありません。草を食べることが好きな子では、食事不足と決めつけず、まずは有毒植物や薬剤の心配がない環境を整えることを優先しましょう。
まとめ|草を食べたことより、“その子全体”を見よう
犬猫が草を食べるのは、珍しい行動ではありません。「吐くため」だけでは説明できず、探索、好み、本来持っている行動など、いくつもの理由が関わっていると考えられます。
草を食べる姿を見ると、つい「何か足りないのかな」「気持ち悪いのかな」と心配になります。でも、大切なのは草を食べたことだけを見るのではなく、その前後の食欲や元気、便、吐き気など、その子全体を見ることです。
いつもの行動を知っているからこそ、小さな変化にも気づけます。自然な好奇心を大切にしながら、安全な環境で毎日を過ごせるよう見守っていけるとうれしいです。
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