なぜ犬はミミズやおやつに体をこすりつける?|犬の“匂いをまとう”不思議な行動
散歩中にミミズを見つけた途端、首や肩をこすりつけてゴロンゴロン。新しいおやつやジャーキーにも、同じように体をこすりつける愛犬を見て、「なぜそんなことをするの?」と思ったことはありませんか。
人にとっては不思議だったり、時には困ったりする行動でも、犬にとっては強いにおいに出会った時の自然な反応なのかもしれません。ただし、その目的が何なのかは、まだ一つに決まっていません。
この記事では、犬がにおいのあるものへ体をこすりつける行動の考え方と、見守ってよい時・止めた方がよい時を紹介します。
あの動きには「scent rolling」という呼び方がある
強いにおいを嗅いだあと、あごや首を近付け、肩から背中をこすりつけたり、地面で転がったりする行動は、英語でscent rolling(セントローリング)と呼ばれることがあります。
オオカミをはじめとするイヌ科動物でも観察されている行動です。オオカミの研究では、においへあごや首を近付けたあと、頭、首、肩、背中をこすりつけるような一連の動きが記録されています。
家庭犬がミミズやおやつに見せる動きを、すべて同じ目的のscent rollingと断定することはできません。それでも、「気になるにおいを嗅ぐ」「体にこすりつける」という共通した行動として、考えるヒントになります。
犬にとっては、“臭い”より“気になるにおい”
乾いたミミズ、動物の死骸、ほかの動物の糞、腐敗物などは、人には不快なにおいに感じられます。しかし犬にとっては、強く新しい、情報量の多いにおいかもしれません。
オオカミの研究では、糞や動物由来のにおいだけでなく、香水、機械油、ハーブ、カレーの香り、羊毛などにも、においをこすりつける反応が見られました。どんなにおいにも同じように反応するのではなく、においの種類や個体によって反応が異なります。
「臭いものが好き」というより、“強くて珍しいにおいに惹かれている”と考える方が、犬の行動を理解しやすいでしょう。
なぜ体ににおいを付けるの?|考えられている3つの説
この行動にはいくつかの説がありますが、どれか一つが正しいと確認されているわけではありません。
説1|自分のにおいを隠すため
獲物へ近付くために、自分のにおいを別のにおいで覆う、いわゆるカモフラージュではないかという説です。
ただし、オオカミが香水や機械油のように、狩りとは結び付きにくいにおいにも反応することから、この説だけでは説明しきれません。
説2|仲間へにおいの情報を持ち帰るため
体ににおいを付けて仲間のもとへ戻ることで、「こんなにおいを見つけた」と伝えていたのではないか、という説です。イヌ科動物は、尿などのにおいをコミュニケーションに使います。
実際に、においを付けたオオカミをほかの個体が嗅いだ様子は観察されていますが、情報共有のためと断定できるほどの結論には至っていません。
説3|強いにおいそのものが楽しい
犬にとって、においを嗅ぐことは大切な刺激です。珍しいにおいを見つけ、それを体に付けること自体が、嗅覚を使った楽しみや環境の刺激になっている可能性も考えられます。
ミミズだけでなく、新しいおやつ、ジャーキー、ガム、おもちゃなどに体をこすりつける犬がいることも、「狩りのため」だけでは説明しにくい点です。
「自分のもの」とマーキングしているの?
お気に入りのおやつへ体をこすりつけると、「自分のものにしているのかな」と思うかもしれません。
犬がにおいで情報を残す時は、尿などを使うマーキングがよく知られています。一方、scent rollingでは、対象物へ自分のにおいを付けるというより、対象物のにおいを自分の肩や背中に付けているように見えます。
そのため、「これは自分のもの」と示しているだけでは、この行動を十分に説明できません。理由はまだ分からない部分があるからこそ、犬のにおいの世界には面白さがあります。
シャンプーのあとに床や草へこするのも同じ?
シャンプー後に床、ベッド、芝生などへ体をこすりつけることがあります。香りのあるシャンプーによって、いつもの自分とは違うにおいになり、馴染みのあるにおいを付け直そうとしている可能性はあります。
ただし、濡れた被毛を乾かしたい、皮膚がムズムズする、体をほぐしたいなど、別の理由でも体をこすります。すべてをscent rollingと決めつけず、どこに・いつ・どのくらいしているかを見ましょう。
自然な行動でも、止めた方がよい場面

ミミズへ一度こすりつけたことだけで、必ず体調を崩すわけではありません。それでも、次のようなものには近付けない、またはこすりつける前に離れるようにした方が安心です。
– 動物の死骸や腐敗物
– ほかの動物の糞
– 正体が分からないもの
– 農薬や薬品が付着しているかもしれない場所
こうしたものには、病原体や寄生虫、薬品などが付いている可能性があります。体に付けるだけでなく、その後に舐めたり口に入れたりするおそれもあります。
「自然な行動だから、好きにさせよう」とは考えず、呼び戻しや「おいで」「離して」などで、別の行動へ切り替えましょう。強く叱るよりも、気になるものを見つける前に距離を取ることが現実的です。
こすりつけたあとに、家でできること
汚れやにおいが被毛に付いた時は、できるだけ早く犬用シャンプーで洗い、十分にすすぎます。何にこすりつけたか分からない時や、死骸・糞・薬品が疑われるものに触れた時は、洗ったあとも口に入れていないか、体調に変化がないかを見ておきましょう。
嘔吐、下痢、よだれ、元気・食欲の低下、震えなどが見られる時、または何かを食べた可能性がある時は、自己判断で吐かせず、動物病院へ連絡してください。何に触れたか、いつ起きたかを伝えると診察の助けになります。
においがなくても、何度も体をこする時は
においのあるものがないのに、壁、床、家具へ何度も背中や顔をこすりつける時は、scent rollingとは別に考えます。
かゆみ、赤み、脱毛、フケ、しきりに掻く・舐めるなどがあれば、皮膚の炎症や外部寄生虫などが関係している可能性があります。急に増えた、落ち着かない、痛がるといった変化があれば、動物病院へ相談しましょう。
まとめ|犬にとっては、においも大切な発見
ミミズやおやつに体をこすりつける行動は、scent rollingと呼ばれることがある不思議なしぐさです。狩りのカモフラージュ、仲間への情報共有、においそのものを楽しむ行動などの説がありますが、はっきりした答えはまだ分かっていません。
私たちには「なんでそんなにおいに……」と思えても、犬にとっては、とても気になる情報なのかもしれません。その子がどんな時に、どんなにおいへ反応するかを観察してみると、新しい個性が見えてくるでしょう。
ただし、死骸、糞、腐敗物、正体不明のものは別です。犬の好奇心を大切にしながら、安全な距離へ導いてあげましょう。
この記事が参考になったら、「いいね」で教えてください
その他のコラム
Other Columns
-
尿のpHが高い=フードが悪い?|犬猫のおしっこから分かること
-
犬を撫でるなら、どこを触ると喜ぶ?|“撫でられたい場所”は犬が教えてくれる
-
犬・猫が食べてはいけないもの|「なぜ危ないか」まで知る、いざという時に守れる知識
-
犬猫の“免疫”はどこにある?|「免疫力を上げる」の前に知ってほしいこと
-
犬・猫とビタミンの話|人の「体にいい」が、そのまま通じないビタミンのはなし
-
体を温める食材、冷ます食材|東洋医学の「五性」で、愛犬・愛猫のごはんを季節に寄り添わせる
-
犬猫のワクチンは午前中に打つべき?|接種する“時間”より大切なこと
-
食後に眠くなるのは犬猫でも珍しくない|消化と自律神経の話
